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「そういや、じーちゃんがこの国にきて初めて桜なるものを見たときは思わず泣いちゃったんだよねー…」 夕飯の席だった、その瞬間にガッシャン!!という盛大な総崩れ的な音がばかばか轟いたが 爆弾発言の発信地はなんとも平静だった。目が波打っていたが。向かいでそんな顔をばっちり見てしまった 綱吉は深い溜息をつくしかない。なんたって、この家の家政婦の驚き様は心底わかるのだ…。 男はケケケ、とわらった。してやったり的な悪辣さしたたる顔で見事にデロリと汁ものやら煮物やらにまみれた彼を にやにや笑いながらみすえた。きったねえなあー!と噴き出しながら実にケタケタとよく笑って 手にした湯のみをカコーンと顔面に投げつけた。…ひ、ひでえ!!綱吉は小さく悲鳴をもらして青ざめ涙目になった が………、ゴクリと喉を鳴らして、深呼吸をして、平静を、…取り戻すのだ。やはりもうなれた。なれすぎた…!! 男は家政婦にとことん容赦なかった。綱吉をでろでろに甘やかして…、その一方で残虐なふるまいを堂々と彼にした。 かわいそうだ。しかも、…被害者はいつものことだとケロリとする。正直いたたまれない……!!! 「あ、あの…俺、ふくものを……!!」 「ああ、大丈夫ですよ。綱吉くんは座って食べててください。私のことはお気になさらずに」 ニコリと微笑む。…綺麗な白い鼻筋には血が伝っている。初めて見たときは女と見紛うばかりの白百合の美貌で 思わず背筋がのびたものだが…。いまでは。実にそれは遠い日だ。 彼は慣れたようにてきぱきと処置してささーっとぶちまけたそこらを何事もなかったように綺麗にした。すげええ!! 一家に一台ほしいくらいの有能な方だ!!Mだけど。ドがつくけど…! 「じいちゃん否定しない」 「ヒッ!!?…って、否定しようよ!!?というか諸悪の根源じゃんかじいちゃんが!!」 「いーちゃんって呼ばない子のいうことはきかないもんだ!」 「『もん』!?じ、じ…、……ぃ、いーちゃんは、もういい大人なんだからそんな語尾は」 「似合うンだもーんだ!じいちゃんは20代に見えるナイスバデーだから!!」 「なんか使い方ちげええええええーーーー!!!?」 ぷーーんだ!という擬音がみえそうな可愛らしい顔の逸らし方とその間違った用法に脱力しながら…、綱吉は、 ふかい、どんよりとした重い溜息を吐いて諦めた。最凶だからだ。当年たしか還暦らしい?バケモンじいちゃんの 若さの秘訣はその精神年齢によるのだろう。よるだろうさ。よるとも。 「で、ツナは俺の話きかねえの?」 「……は?」 きいてないのはお前だ。 そんなツッコミが出そうだと思ったがぐっとのどをつまらせた。いってはならぬ。彼の背後で家政婦が必死に 何かサインを繰り出して…ああ!ぐるんとまわった。目にも止まらぬはやせで、うぜえよ、と。その 一言がいいおわらぬ内に片手で軽くいなされたのだ。 「……まったく。ひとの話を聞かない子はきらいです。じいちゃんの頭は怒髪天ですよ。真っ白く怒りにそまり 天をつく勢いでさかだっておりますよ」 「え…、あ、あのそれ……、もとからじゃ、…ぎゃあああ!!」 「ん?」 ニコッとわらった。しかしその手はグッパ、グッパと開閉をリズミカルに繰り返し、もう一方の手が家政婦の襟首を 逃がさぬようにしっかりとつかんでいた。 「きくーー??」 「きく!!!きく!!!すげええええききたいいいいいーー!!!」 「ん!いいこだねー綱吉くんわーー!」 きゃっきゃっとわらうとパッと解放した。 続 |