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(1) 「奈々ちゃんの作るご飯は美味しいよねー」 「まあ!ありがとうございます、お義父さん〜」 カッチンと二人は茶碗としゃもじの端をなにかの合図のようにぴったりのタイミングでかち合わせた。うふふあはは〜となごやかに顔をかくーんと無邪気に横に傾け合いながらのんびり春爛漫な笑顔で。奈々ちゃん、お義父さん、うふふ、あはは…。あれなんか新婚家庭なのここ?綱吉は少々頬のあたりを引き攣らせ青く沈みながら…、んく、と喉を小さく鳴らして苦虫を噛み潰したみたいにご飯を飲み込んだ。ぱああーっと花畑が浮かび花びらが舞い踊る背景が見えそうな笑顔の二人は本当に仲がよく、というか家康が奈々を大変気に入ってるという次第でもあり『…家康様の背後に化け猫が百匹くらいのってますね確実に!』といつだって冷静沈着な霧をガタガタ戦慄させたくらいなのだ。ふるふる震えた固い拳と青ざめた横顔がなんか貞子に似てるなぁと思ってむしろ俺はあなたに戦慄する!!てな具合にだったので綱吉はしっかりと覚えていた。 (…普通に考えれば、まあ、いいことだよね。舅と嫁さんが仲いいのって) ぱく、と回鍋肉のキャベツの端を口にくわえながら、…しかしどうにも釈然としない気持ちがさっきからぼこっと沸き上がる。がじがじ噛み砕きながら、それがぐつぐつ、ぐつぐつと綱吉の眉間にうっすらと皺をよせさせる。…なんか嫌だなあ。最近の綱吉の食卓では彼の笑顔は自分にだけ向けられ世話もやかれていたから。(それ以上にやいてもいたが色々と) なのに。 なのに…。 これ以上考えたくないことがツンツンと焦燥みたいな勢いで胸を刺し腹の奥ではぐるぐると重い塊が唸る。鈍く重いそれは熱をもって急かすよう叱り付けてきて…。さあ、さあ! (や、やだ、やだよ) ヤキモチだ。 家康は奈々ちゃんとばっかり言う。隣にいる綱吉を構わなくて、綱吉は淋しい。 …だめ。だめだ!我が儘だ勝手だこんな感情! (じーちゃんはべ、別に俺のじゃないし!俺が縛る権利ないし…!!) > (2) 「……だってツナだってたまには家に帰りたいだろー?」 ねえねえとゲームに熱中する綱吉に擦り寄りながら家康は甘えた声をだしてきゅっと綱吉の腰に腕を回した。 それにすかさず綱吉はぺしんと叩き落とした。 「つーなあぁーー!!!」 「じーちゃん近所迷惑!」 「いーちゃん!」 「うるさい!めっ!」 「ツーナーが、いーじーめーるぅー!」 「いじめてないじゃんか人聞きの悪い!!」 なに変なことい出してんの!?と綱吉が再度めっ!と叱り付けても家康はわんわん喚きながら綱吉の背にぐりぐりと頭を擦り付けてきた。自分の何倍も年上の男が犬のように甘えてくるのは正直いってキュンと胸をくすぐられてうっかりほだされかけるが…、綱吉はぐっと堪えるのだ。たとえ綺麗な金色の毛並み効果のおかげで家康の頭がさらさらといい匂いがして触り心地抜群そうでも!(いや実際いいんだけど!)綱吉はつんとそっぽを向くようにゲーム再開をする。 「………寝技に持ち込むよ」 「家ではやんない約束で泊まりにきたんでしょ」 「…………つ、ツナが冷たい〜!!」 うええーん!!と盛大な嘘泣きをし始めた家康は相変わらず綱吉の背にぐりぐりと頭を擦り付けかまってかまって攻撃を繰り返し続けた。 > (3) 家康は老人らしくに朝は割と早い。だらだらしている印象が色濃いあれだが、綱吉よりも早くに目が覚めて綱吉の寝顔をにっこりながなが眺めて綱吉の着替えを手伝おうとする。 …まあ外見を裏切るくらいに寝汚いということがまったくなく朝から元気なのだ。 (でも今日は俺が寝顔みちゃったなあ…) ぎょっとした!すーすーと寝息が綱吉の前髪を揺らし、口も半開きで深く眠りついているようだ。間近で見た顔はぱたりと瞼が落ち驚くほど無防備でうっすらとあどけない。あ、睫毛が金色…、キラキラと微かな朝陽を頼りに輝くそれに思わず綱吉はドキマギしたが同時に外国人なんだなあとうっかり忘れていた事実をはっと掘り返された。普段が普段なのだ。あんまりにもだるだるで流暢過ぎる日本語を操るからすっかり忘れてしまうが、彼は生粋のイタリア人だった。 ご近所さんに元ヤンのニートとか言われるくらい日本に馴染んでいるが間違いなく! 「……ちゅーしたくなるくらい可愛い?」 「へ?」 ゆっくりと、金色に縁取られた白い瞼が開かれた。キラキラと輝くまるい宝石が二つともじっと綱吉を見つめ、ぼんやりしたちょっとの間の後にふっと…、顔にかかった金糸の隙間からゆったりと優しく微笑んだ。白皙の頬はゆるりと甘い笑みに染まり綱吉はまんまるに目を見張ってじわんと耳の端を赤くさせた。 「おはよ」 軽いきぬ擦れの音をさせ家康は綱吉を引き寄せて胸の中に大事にしまい込み、ふんふんと犬のように鼻をならして綱吉の頭の中に顔をつっこむ。いいにおい…、微かに呟きながらうっとりと悦に浸った。寝ぼけてるのかなあとドギマギする胸を抱えながら大人しくされるままになっていた綱吉だが、…家康の腕が、次第にさわさわと細い寝起きでほてった身体をなぞり始め尻のあたりをついっと、指先が谷間をなぞった時にようやくはっとした、…な、撫でられてる!一気に爽やかな朝がざばっと淫靡さに塗り潰された一瞬であった。 「じ、じーちゃんなにやってんの!!!」 騙された! 「ナニ」 「じーちゃん!!!!」 んぎぎぎー!っと力の限りに胸を押してもビクともしないさすがだ!足の間に家康の膝は突っ込まれ、パジャマの下に手を滑りこまされ、身体とは裏腹に綱吉の心中はサァーっと青ざめた。むにむに、もみもみと尻を揉んでくる。 「やっぱり昨夜、あ、違う…昨昨夜?昨日の朝かな?に、出してるからあんまガチガチじゃないよね…」 やーらかいなあーとのんびりともしかしたら寝ぼけてるんじゃないかみたいな声で家康は綱吉の股間を膝で擦りながら朝勃ちしたものをゆるゆる刺激した。 「や…、やめッ!!」 ぷつ、ぷつ…と器用に片手でパジャマの前を開くとぺろぺろと首元にしゃぶりつく。 「つなぁー、ローションどこやったっけ?」 もごもごと綱吉の鎖骨のあたりで、うちにベッドあったっけー…と呑気に呟いた瞬間に綱吉はカーンと何処かで鐘が鳴る音を聞いた。ねぼけてる完璧に!! 「お、おおお起きろぉー!!」 がつーん!!渾身の力を込めて綱吉は家康の頭をぶん殴ったのであった。 「…はっ!」 「…………」 はっ、じゃない…!!綱吉は壁をどんどんと叩き付けたい衝動を家康の気を失っても緩むことのなかった腕に押さえつけられ、仕方ないようによろよろと脱力した。 「つ、ツナがじーちゃんを可愛く濡れた目で見上げて誘ってきた夢見たけど正夢かな!!」 「なんない、なんない…」 わーい!とすっかり目覚めた家康は寝起きとは思えないハイテンションさでぐりぐりと綱吉の頭に頬擦りしぎゅうぎゅう抱きしめてきた。うぜえ。 「しよう!!」 「しないよ!俺今日学校!!」 「知ってるよ、だって奈々ちゃんと取引の為に泊まってるしー!」 ちゅっ、ちゅっ、とがっちり顔を家康の手に挟まれ顔中にキスの雨を降らされながら、綱吉は、へ?と眉をしかめさせた。 家康はその顔をうけてにっこりと極上の天使の笑顔を無邪気に浮かべ…、ちゅーっと首筋に強く吸い付く。 「なっ!?あ、あとが!!」 「つけたの!ツナは俺のだし…」 ついでごそごそとパジャマのズボンのゴムを引っ張りずり下げて尻を丸出しにする。さすがに潤いのないままに突っ込むことはしない。むにむにと掌で感触を楽しむように揉みながら 「……こん中にバイブ突っ込んで、授業参観中にリモコン操作していい?」 「変態ぃぃー!!!」 ぎゃあああ!!と死ぬ気で暴れたおかげでその難は逃れたが後にうっかり家康を授業参観にこさせないように奮闘することをまるまる忘れていたと気付いたのだった、…騒然とする教室の中で。 家康は奈々に俺いきたいー!と駄々をこね奈々にじゃあ久しぶりにうちで夕食してお泊まりするならとにっこり条件をつけられていたのだ。 で。 しゃららーんと現役時代のスーツとマントまで!着用して霧を執事にしたて英国貴族のようにふるまった彼は魅惑の笑みを終始浮かべ綱吉の隣の席を強奪した。 授業にならなかったのはいうまでもない。 |