たまに、この人は何のために俺を手元に置きたがるのか、どうしてなのか、愛している大好きだ離れないでといわれてもとても不安になる。
「んっ、ふ、あ、ぁあ、あァ…!!」
 体を揺すられながら綱吉は喘ぐ。ず、ず、ず、と擦れる肌と布の感触。絶えず直接的な刺激を与えられずじわりじわりと攻められていただけの綱吉には、家康自信が綱吉の体に打ち込まれた事に堪らない快楽を感じていた。思考が弾ける。けれど意識を飛ばしそうになるたびに彼の手のひらが綱吉をきゅ、と締め上げ、痛みで引き留めるのだ。一度イかされてからは、ずっと。手首に食い込んだ水色のネクタイは、水分を含んで色味をましている。閉じることもままならない綱吉の唾液がこぼれたりもして、ぐしょぐしょだ。四つん這いで腰だけを高くあげてひんひん鳴いている様は家康には滑稽で、淫乱で、それは彼の残酷な部分を煽りたてる。かわいいかわいい、己の血と器を継いだ子。
「…ん、ふふ…犬みたい…卑しい子だねぇ」
「や…、ぁあ!」
 女の子のように高い悲鳴を上げる綱吉に、彼の笑みはますます深まる。この子を抱いている時の快感は、いままでにないものだ。自分と同じ姿だから?仲間でも部下でもなく、真に家族だから?彼の業を崩す希望だから?何が家康を興奮させるのか。愛しさをかりたてるのか。
(それはきっと綱吉が、綱吉だからだ)
 ぐっとさらに深く挿入する。ぬちゃりと結合部が音を立てる。喉を仰け反らせひときわ高く鳴いた少年。
「ーーぃ、ちゃあ…!」
「ん?なぁに」
 ぐったりとシーツに顔を埋め、肩で息をしながら真っ赤になった少年は、横顔を見せながら家康にとどまることを知らない涙と共に訴えた。
「ー…いか、せて、よぅ…ッ!!」
 自ら半分体をひねり、それで家康を感じようとも綱吉は必死に嘆願した。
「ん…そうだね、じゃあ一回イかせてあげよう」
 ぐるんとツナの脚をあげ、つながったまま向かい合う体勢に変わる。手のひらでゆるりとすり上げればあっという間に綱吉は達した。
「ー…ッあ…!」
 ピュピュッと勢いよく強制的に止められていたそれが一気に解放され、ぼたぼたと綱吉の腹にこぼれていった。同時に家康を締め上げ、く、と堪えるような吐息が綱吉の上から吐かれる。は、は、は、と荒い呼吸が収まらない。綱吉は薄く開いた瞼の奥から淘然と家康を見上げた。薄暗い部屋で、僅かな外からの明かりを受けながらほほえむ家康は、幽鬼の如く青く美しい。何故、青く、と思ったのか綱吉にはわからない。彼からにじむ冷酷さが青というイメージを与えたのだろうか。綱吉にはわからない。
(…ああ違う…じぃちゃんは…)
 つ、と綱吉の拘束されたままの腕が家康の前に持ち上がった。ほどいて…?と綱吉が囁くように頼めば、あっさりとその戒めを取り払う。僅かに赤い跡が見え、血が指先に通っていく感覚を覚えながらそっと家康の頬に触れる。
 汗で張り付く手のひらを家康は不快にも思わない。瞼を伏せながら甘えるようにその手のひらをすり寄せる。
「…じぃちゃんは…あおい…そら…みたい…だ」
 掠れ声で並べられた言葉。静かに瞼を開き、なんでそう思う、と尋ねた。
「じぃちゃんの目、青くて…きれい…」
 残酷で、冷たくて、何をも飲み込み見透かす瞳だと称えられた事など、少年は知らない。大空のようだと言われたマフィアのボスが自分の過去だと、子供は知らない。そこにあるのはただ少年の綺麗だと思った感情からの言葉。
「…こんなに酷い事をするじいちゃんを、お前は綺麗なんて言うんだ?」
 静かに体重をかけゆるやかに腰を回す。んっ、と詰まるような声のあと、耐えるように吐息を漏らす。
「で、も。きれいなものは、綺麗じゃないか…」
「…俺が綺麗だというなら綱吉のほうがもっと綺麗だけどね」
 綱吉の細い腕を背中に回させまた大きく腰を動かした。ひゃうっと悲鳴を上げるが、口を塞いでそれ以上はくぐもるだけだ。ただひたすらに綱吉は家康が放つものをナカで受け入れる。
「大好きツナ」
 愛して。俺を全部愛して。すべてをさらけだす気はないけれど。
 よれたシャツを身につけたままの家康に対して、綱吉は生まれたままの姿。それは二人の本質を体言するようで。今まで何度も抱き合ったけれど、その考えは不思議と浮かんだ事がなかった。綱吉はおぼろげな意識の中、不安によぎる気持ちの正体に、ふと思いついてしまった。
 盲目な愛が怖いんだ。
 それは与えることも与えられることも自然な家族愛に似ていて全く違うもの。体を重ねる度に、ふとした瞬間に知る、彼の素の表情。優しさと残酷さの間に潜む複雑な感情。綱吉はそれが何か知らないし、わからない。
 首筋に沈むように身を重ねた家康。愛しているよと確かに言ったのに、壊してよと綱吉には聞こえた。何を、なのか、考える前に綱吉は意識をまどろみにまかせた。


終。
2008/09/28