綱吉。 あの頃に君は戻りたいと後ろを振り返るみたいだけれど、『その時』にはもう僕らは出会っていたよ。 ( ……おぼえておくといい。過去をまるでお守りにしてるみたいだから。 ) ねぇ、綱吉。 その事はよく覚えておくといいよ。それだけを君は振り返ったらいいだろう。
イ バ ラ ミ チ
イタリアに行くんだってねと言ったらツナは途端にバチンと何かに弾かれたかのような勢いで 俯いていた顔をサッとあげた。 あ、なきそうみたいかな。 大きな目が更に大きく限界まで見開かれてその目の様子がなんだか本当に猫みたいだなあと思って ヒバリはクスリとわらってしまう。猫はすきかもしれない。さわるとしたら絶対にツナヨシの方だけど。 なに、その震えた唇。 ツナの顔がくしゃりと歪んだ。傷ついた顔みたいに。 「知ってて、嘲うんですか俺を」 「え?だって猫みたいだったじゃないか」 「猫!?どうせ俺は子猫みたいで頼りないですよ!!」 「…………綱吉。君はどこの電波を受信したんだい?」 まんまるに見開かれた目が猫みたいだっただけだよ。そういえばツナはハッとした。それをヒバリはまたわらう。 このこは本当に面白いなぁとクスリと微笑みツナはバツの悪い顔を気分悪げにのせていた。 ああ、今日は空が高い。夏の日差しがとても遠くてツナの髪の毛先が金に光ることも少なくなるのだろうか。 ヒバリはすきだった。 闇と光がちゃんとした境界線を持つような季節。黒と。青と白。 なにもかもが激しくはっきりと別たれた世界はまるでナイフの切っ先に似ている。 「いつたつの?」 「………多分、もうすぐ」 「それは僕の聞きたいことじゃないよ」 「え、…っと、向こうの支度とか整ってからとかで日にちがまだ正確にまだ決まってなくてですね、」 「違うよ綱吉」 「いや!本当にまだ決まってないんですって!!」 「だから違うよ綱吉?」 知っているんだ。 ヒバリは知っている。 ツナの中にはツナだけの物語がすでに出来上がってることなんて。その中にヒバリが組み込まれないことくらい とっくに。とうの昔に。 そんなこと知ってたよ。(知らないふりが出来るくらいには) 「僕と君の関係を『絶つ』時だよ」 もう曖昧な世界を泳ぐことをしてはいけないふたりにならなければならなかった。 |