運命。 幸福も酷薄さもすべて同じ名。運命。それは幸福でも不幸の名でもない。ただの生きる道の名。 『 ……おぼえておくといい。過去をまるでお守りにしてるみたいだから。 』 ねぇ、綱吉。 その事はよく覚えておくといいよ。それだけを君は振り返ったらいいだろう。
イ バ ラ ヒ メ
「……昔から君は甘い」 群れることを嫌うヒバリを愛していたのかヒバリをこの世界に引きずり込みたくなかったのか。 まるで君の手はイバラみたいだとでもいうのだろうか。触れてみなければ本当に傷つくかどうかなんて 解るわけがないのに何で知った風な顔ばかりをするのだろう。 傷つけてもいいよ。そう言ったのに。 それ以上に君が傷ついてくれるんだから本望だよ。って。 もっとたくさんそう囁いてやればよかったのだろう。(たくさんたくさん呪ってあげれば良かった。) 「いや、覚悟がないというのかな」 その優しさは弱さで労わりは侮り。 (思うだけで心が強くなるなんて有り得ない。見えないものを強いと思うのはなんて愚かしいことだろう。 見えないものに縋るよりもはっきりと目を灼くような世界を焦がすものを見つめ其れに確りと 縋ればいいのに。ああ。うん、そんな感じだ。それにしがみつく事こそを強さというんじゃないのかなとヒバリは目を閉じながら思う。) ああ、もっとちゃんとのろってあげればよかった。 「綱吉、君はどうして僕をそう侮るのが上手いんだろうねぇ……」 ” のろってあげる。 ” ” だいじょうぶ、だいじょうぶ。ちゃんと呪ってあげる。 ” 「君の座る場所は僕こそが相応しいとは思わなかったわけじゃないだろうに」 『さあ思い出して。君が誰に触れたら誰が血を流していたの? 君は何に触れて血を流していたの?君は何故ほほえんでいられたの?ねぇ思い出しておもいだしてサァオモイダシテ。 さあ、はやく。はやくはやく。』 「僕は僕の道をいくよ。君とは違ってちゃんとした覚悟を持って自分の足で進んでいくよ」 これが運命。君の声で呼ぶ名とはだいぶ違うだろう名前をつけられたモノ。それがこの世で一番の『運命』。 (どんなものよりもステキな色と匂いに満ちたりた。) 目の前の重厚なる扉。(御伽噺でイバラに守られていたのは誰か知っているよ。君はそんな風でいてくれても 僕は一向に構わなかったのだけれど。) ヒバリはゆっくりと微笑みながら濁流の積み込まれた扉を開く為に手をまっすぐに嬉しそうに伸ばした。 「君がすきだよ。僕こそがイバラだって君がいつ気付いてくれるのかドキドキしていたけれどもう時間切れだ」 さあ、君をのろってあげる。 (もう二度と振り返ることのないようにちゃんとまもってあげる。君の為にだって生きるよ。) 「綱吉…」 『 すきだよ。だからもう二度と離れようなんて思わないで欲しい。 』 |