……… わ ら っ て よ 。
ひとでなしの恋
「機嫌が悪いんだってね」 さっきあの赤ん坊が…、ああもう赤ん坊じゃなかったリボーンだ、そうあのこが 君の機嫌が悪いっていってたよ。ヒバリは平淡な声でいってのけるがその中に確かにツナは呪いのような 色をみた。リボーンが間違いなくかけた術だコレは。どうしてだと思うけれどもそうかよと悪態をついてしまう。 なんだって必要なことも必要な時に言うわけでもないのに。このひとにだけは伝えて欲しくなかったというのに 何故わざわざ言ってやるのか。長年の付き合いでわかっていることをヒラリと蝶の羽根のように軽々しい翻しようで 無視をしていき唐突に蜂に変貌したりして嫌なところを鋭くつく。的確に毒のように。 まったく鱗粉のようにポロポロと言葉を零すんじゃないよ。そして、こんなコトもやめてくれ。 「機嫌なんて、ヒバリさんを見たらなくなっちゃいましたよ」 「なにそれ」 「なくなったんです」 「ふぅん」 変なものだね。彼はそういって口を閉じた。きれいなひと。黙って立っていれば誰からだって愛されそうだ。 「………大丈夫、ヒバリさんの方が変だから」 「わお」 「へんですから」 「そう?」 「はい」 膝をかかえてその中に顔を埋めてしまいたい。そうしたら慰めてくれるひとを好きになりたい。 こんなひとは嫌だ。こわい。ヒバリさん。こわいひと。けれどもどうしたって心がはなれてくれやしない。 楽しそうにわらうなこの野郎。 「ん?だって面白いことを言うなぁって思ったんだ。ほら、僕って『常軌をイッした』とか『精神が病んでる』 『人を殺すのを心底楽しんでいる悪魔』とか言われてるからね。だから『へん』の二文字は新鮮でおもしろいなぁって。 ああ本当に綱吉は楽しいことをいうよね。それとも綱吉がいうから面白いのかな?」 「そうですか……」 「もっといってみてよ」 「…………へん」 「ん」 「へんなひと」 「そう」 「……変態」 「……………」 するりと頬をすべる両のてのひら。あかい、つめたい、すきなひとのて。 ひとは冷たいものにしがみつけば凍えてしまう。あたたかさに包まれたら心はとても安らかだろう。 リボーンは弱いといった。弱さを捨てることが出来ないことも蔑んだ目でみた。それは宝物じゃないだろうと。 (ごめん、俺はきっとずっと、いつまでもダメツナなんだ……) ひとを殺すのはいやだ。(そんな道徳は捨てちまえといわれた。) 殺されたくない。殺されたくないひとがいるから尚更いやだ。いやだよリボーン。 このひとは本当に冷たいひとなんだからこわいよ。 「綱吉?」 ヒバリを愛してる時点でお前は人でなしだよ。そんなこと(しってるから。)いわないでくれ。 このひとがこんな世界でしか生きられないなんて…。そんなことを誰よりもわかってるのは。 (手が離せないのは)(たのしそうですね。)(それでも愛してるって)(すきだよすきだよ)(わらってよ。)(………すき。) 「どうしたの?なにをわらっているんだい綱吉?」 『 このひとを喜ばす玩具を与えているのは他でもない自分だろう…。 』 命という名を見ないふりでただその笑顔のためだけに。 (だからお前はもう立派な人でなしだというんだ。) |