おぼえていて、いないで。









博 愛












目の前には敗北があった。完膚無きまでに厳しい現実として血色の雫がたらされている。 骸はもう手足の先さえ動かせない。常に冷静であった思考回路がひどく鈍く軋み何の策略も産み出さない…、 なんて屈辱だろうか。
彼は冷たい眼差しで飄々と見据えてくる。深く、何処までも延々と深い眼差しで心の奥底を覗き込むような、 暴れ込み何かをずるりと引き摺り出すような怖い目で真っ直ぐに見つめてきた。見るな、いやだ。 弱弱しい意思が唇から漏れそうで、なんなんだと混乱してくる。ぐちゃぐちゃと巡る。真っ白な闇か貴方は。 殺される瞬間など知らない。唇が震え、ゴプリと血が滴った。そんな気配が微塵も匂わないのに、殺されそうだとキリキリと胸が締め付けられてくる。 イヤダ。こんな瞬間には一秒として居たくはないというのに…! こんなちっぽけな矜持などがあったのかとなどとは知りなくはなかった……ッ。

「……ころせば、いい…………」

最早、自分を整えてくれる人などいないのだと思い知っていたいのだ。

絶望のまま、そうしていたいのに…!!


























「…殺してあげますよ。貴方が死なないように」












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H18.2.18