裏側からまた背面へ。
もう何もかもが冷たくどんよりとし、鈍く、指先の感覚がなくて怖かった。おそろしかった。 無様な格好だったが、あの人に美醜への拘りがどんな形であったのかを思い出し、 ……そうして、心は奮い立った。 「…む、…くろ、さん…」 最早コレは声ではないだろう。息なのだろうか、執念だろうか。 「ええ。僕はここに居ますよ。楽にしてあげますから」 「おれ、もう、…」 「ええ。大丈夫じゃないですよ」 「おれ、あなたが…」 「すきでしたよ僕も」 「うそ…」 「嘘なんかつくわけないでしょう?」 かわいそうだ、このひと…。どれだけ傍に居たのだろう、どれだけ傍に居てあげただろう。 ムクロさん。ムクロさん、ムクロさん、ムクロさん…。 もう一度最初から出会いたい…。どうして自分にはこの人だけしかいなかったのだろう。 もう少しだけ、世界を、みさせてください。世界は、本当に……? 貴方を憎んだのだろうか……。 ならば、おれはどんな手を使ってでも貴方を守ってあげたのに……。ころしてあげたのに…。 貴方がのぞまないことを全部かなえてあげるのに。貴方だって殺してあげたのに…。 そんな、羨ましそうな目でみないでくださいよ。 「…おれ、メスのカマキリになりたい、そして、貴方をたべて、あなたを子供として……ッ!!」 『 殺してあげる…。憎んだ世界にもう二度と産まれないように、俺の子供として産んで殺してあげる 』 そばにいてあげる。 NEXT ***> [ 憂 愛 ] H18.2.18 |