* * 幼なじみヒバツナコ番外編  +-+-+--> by からすまる 










** 世 界 は 君 の 為 に 鐘 を 鳴 ら す **












明日は雪が降るらしい。確かそんな事を出かける前に聞いていた。 いや、今から降りだしてもちっともおかしくないんじゃないかなあ…、やんわりと重苦しい色の空を眺めながら ツナは悲壮な顔でそう思った。絶対に。今日は昨日よりも絶対にかなり寒いに違いない!冷えた手を擦り合わせてガタガタ震えながら、 やっぱり早く帰るべきだとタッと駆け始めた。…なお一層風を冷たくかんじるのだが。

(リボーンの奴!!なんでポン酢きらしてんだよーー!!)

暮れ始めは一層寒くてさむくて、風だってすっごく冷たくなる!なのに、なんで寒い中コンビニへ?? 寒くて鼻がぐすぐすいいはじめる。すべては奴が、きちんと、ポン酢を買ってこなかったからだ! ツナは泣きそうだった。さむいのはいやだ。しかもコンビニは遠かった…。それにそれに…、こわいんだ。

「リボーーンのばっかやろーーーー!!!」

わさわさと暗くどっしりとした木々が鬱蒼と取り囲む。街頭はまだ点灯してくれない。今日は曇りだから、 本当にもうまっ暗闇で、夜が他よりも何時間もはやくやってきたみたいだし、そこかしこに分裂してじっと蹲っているようで気味が悪い。 リボーンの家はいつもこんなんだ。昼間とか朝はいい。でもこんな暮れ時は未だに怖くて仕方がない。 ……ただでさえ敷地がでっかい。いや、これはこれでこじんまりしているのかもしれない? と、いうのも由緒正しいところから見たらという比較からだが。あと、木々なんかばっさばっさ野放しな状態で、 いけないと思う。これをなんとか整えたり切ったりしたら、多分すっきりするんじゃないのかなぁ…?とか思うが、 金がかかると一刀両断だった、そういえば……。でも絶対めんどうなだけなのだろう、だって金なら たくさん持っているのだろうからリボーンならば!

「くそ神主ーーーー!!!」

パッコーーン!!叫んだ途端何処からともなく飛んできたスリッパがツナの頭に直撃した。














「てめえも女の端くれだから迎えにいってみりゃあなぁ…」

すぱーとキセルでタバコ吸って、漆黒の着物を難なく着こなした青年のギラギラとした鋭い眼差しをツナは正座しながら 受け止めた。ぷくっと頬を膨らませてそっぽを向いてだが。彼の眼差しは常人のガンたれとは明らかに一線を隔し、 初めて見た者ならば間違いなく殺意にみなぎった目だ!!と大声で泣き叫ぶ代物であるのだが、ツナにとっては 恐れるものではない。だって彼は本当に怒っているわけではないのだから。 だからツナは自分の不満を優先出来ている。

「てめえは堂々と俺の悪口いってんじゃねえか。ありゃあ当たり前の反応だ」
「でも投げるか普通!頭に!!スリッパをさあ!!」
「なんだ、バットでも投げて欲しかったのか?」
「投げるなっていってんだよ!!」
「だからてめえも女の端くれで、もし万が一に…、億、いや、超?ああ、界が一にでも襲われたら戦う為の 武器だったんだよアレ」
「なんだよその界が一って!!」
「暗闇の中じゃあ幼児体型とかブスかどうかなんてわかんねーんだよ」
「ひどっ!!!」

ひでえ!!ツナは心の底から思いっきりに思った。面と向かっていわれるとズンとくるものがある。 そりゃ美人ではないとはちゃんと解っている。だが、…だからといってブスは禁句だろ??ツナは唇を噛み締め、 ギリギリと殺意まじりの目で睨み上げた。自分も女として口が悪いとは思うが、だが、この男の口の悪さは 最早ダイナマイト並の大暴言がポンポン飛び出してくる物騒さばりだ。時折、本当に自分はこんな奴と 血が繋がってるのかと疑ってしまう。こいつはもしかして木の股から生まれたのかもと……。

「お前今、俺が木の股から生まれた悪魔とか思ってるだろ」

「…うっ!」


こういう所が、更に血縁の謎を深まらせるのだ。彼は本当に常人離れすぎている…!! ツナは強く俯いた顔から、ちらっと彼の目を見つめてみた。相手の目から目をそらすな。これが幼い頃に彼から徹底的に 教え込まれたものだった。相手の目を見て話せ。ひるむな。ツナは泣きながら彼の怖い目を見つめさせられた…。 今も時々ツナは彼の目をじっと見つめさせられる事を強いられる。

「…………………………………………だって、リボーンがポン酢買ってなかった。 俺はしゃぶしゃぶはゴマじゃなくってポン酢がいいのに」
「悪かったな」
「…………………」
「それでいいだろ。ほら、もう飯の時間だ」
「ん…」

顔をちゃんとあげろ、そういって、意外に優しい手つきで顔を上向かされた。あきれた顔。 ツナはこの男とは産まれた時からの付き合いだ。 父親の年の離れた弟で、この神社の跡取り。年末年始は常にこの神社に泊り込んでいる。 すでに祖父母は旅立っていて、リボーンはここで一人で住んでいた。 人嫌いな彼にはうってつけな場所かもしれないと思うこともあるが、やはり……。 ツナは、あやまってくれたからいいやと気持ちを切り替えた。だって今日の夕食は好物なのだし! ツナはさっと立ち上がるとウキウキと居間の方へと向かった。その後をリボーンがゆっくりと続いていく。

「ツナ、今度から俺に言え」
「へーい」


明日はもう大晦日だ。
今年も、妙なところでやさしいこいつと年を越すのだろうとツナはくく、と思わず笑いを漏らしていた。








(終)











 アトガキ
お粗末さまでした!!
H18.2.7