この俺の口から零れる言葉に、一体どれだけの威力があるというのだろうか。









言 霊












思わず、綱吉はパシッと自分の口を右手で覆っていた。しまった。それがありありと語られた 瞳はまんまると驚愕したように見開かれている。深い安らぎの芳香を奏でるような紅茶色の瞳が 薄く青い冷めた色でつるりときらめいた。へぇ…。雲雀はふっとわらってやった。眇めた目にはギラリと不穏な ものがどっさりと詰め込まれていたが。

「……もう一度、囀ってごらんよ、カナリヤ」

ゆっくりと…。一字一音に深い感慨深さを練り込みながらカラッポな言葉を紡ぐ。彼がいわんとしていることは そうじゃあないことをよぅく知り得ている綱吉はぶるぶる震えながら弱弱しく首を振った。こわい。いえません。 すみません…。彼の背後からそんな言葉がじわじわと漂ってくるが、雲雀は強く微笑むことで一蹴した。 いえないのかい?一度はいえたじゃないか?ニタリと凶悪な笑顔でキンと冷えた冷酷な殺気を振り撒きながら、 一歩、綱吉の元へ足を運んだ。さあ、綱吉。ねえ、綱吉?


「僕を愛しているといったその口でその声で舌で、…ねえ、僕を殺すとか言わないくせに簡単に僕を侮る言葉は 言うんだね君は」


最悪だ。クスクス笑いながらも全く目がわらっていない、凍えている。暗く凄まじい眼光。綱吉はガタガタと涙目に なりながら、とうとう、その手を震えながら口から取り去った。青く震えた唇からほんの少し覗いた赤い舌の やわらかさ。なにを紡ぐべきかわからない。そんな姿にぐらりと雲雀の腹の奥が冷えた。 ガッとその細い首を鷲掴むと即座に唇を合わせていた。綱吉はぐぅ…、と呻いたが、そんなことなど無視して 雲雀は無遠慮に舌をつっこみ怯えた舌を強引に絡み取った。このまま首の骨を追ってしまいたい衝動。 舌を噛み切ってしまいたい願望。君の声がだれにもきかれませんように。……ギチリと首を絞めていた。

「…ッ!げ、げほっ!!げほ…ッ!!は、…はぁ、…かはっ!」
「綱吉…、」

解放した途端に綱吉は盛大に咽て空気を思う存分に頬張った。崩れ落ちそうになった身体をひょいと片手で持ち上げ 支えるように胸の中に転がり込ませる。綱吉。亜麻色の髪にとがった鼻先を埋めながら甘い毒のような声で 雲雀は名前を囁く。ねえ、綱吉。耳の後ろを優しく掻き揚げながら、その背をゆったりと撫でていく。 猫の機嫌をとるように。ねえ、甘えた声を聞かせてよ。ふかく、ゆっくりと…、綱吉の感触を味わうように ゆるゆると次第に強く抱き締める。
ねえ、あいしてるんだよ。




「……大丈夫。ちゃんとみんな皆殺しだ」









(終)











 アトガキ
加筆修正でもしてみたい。これが味でもいいのかしら?
2006/07/13