※キョン吉⇒ツナヨピ ・ 慊人さん⇒ヒバリさん
すきだよ、と。 墨が塗られたばかりのように真新しくつやつやと美しい闇色の袖先からするりと伸ばされた両腕。 雪のようにシンとした色の冷たさそのままの白さ、其れがそっとそっと…、綱吉の頬を覆った。 刹那、喉奥からつぶれた声が飛び出しそうになったがガチリと歯を噛み合わせて如何にか堪えた。 …すきだよ。綱吉の眼の前で雲雀がふんわりと微笑んでいる。猛禽の眼差しでギラギラと。すきだよ。 もう一度、もう何度と…。雲雀はニコリと微笑みながらそうっと腕を折り曲げ綱吉を引き寄せた。 ゆっくりと、腕のなかへ…、ゆっくりとその頭をお気に入りの鞠でも愛でるように引き寄せ、 頭部から下の身体を構わなかった。きゅっと綱吉の頭を腕の中に抱え込み、ふふ、と、わらった…。 「大丈夫…。僕だけは君を愛しているから。君を見捨てないし、毎日逢いにも来て上げるからね?」 うたうような声。まるで少女のようだ。ままごとに熱中する子ども。 例えようも無く無邪気な声なのだ。 けれども綱吉にはとてもとても、本当に恐ろしいばかりな毒の篭った声として響いてくる。 すり、と頭に頬擦りをされた。髪を一筋食まれた。甘い声が名前を呼ぶ…。おそろしい。 「誰よりも愛しい綱吉…。呪われた君を愛せるのはこの世で僕だけだ」 (嘘だ…) この甘く絡んでくる冷たい腕を引き剥がしてこの暗い座敷から逃げ出してしまいたい…。 耳を強く塞ぎ、今まで注がれ続けたこのひとの声を頭から絞り出してしまいたい。 すきだよ、すきだよ、すきだよ…、僕だけが。何度として何千の言葉が滴ってきただろうか。 すきだよ。彼は、いつも…、そんな。 「……うそだ、おれのこと、……ほんとうは、」 「いいや?とてもとても愛してるよ?」 「みにくいって…、気持ち悪いって蔑んでるんだろう?」 「だって、それは本当のことだろう?仕方ないじゃないか、そんな君なんだから、 だから君は僕にしか愛されないんだよ?」 「………い、やだ…ッ!」 引き剥がしたい。 「だからね、綱吉?僕の処へ戻っておいでよ…。もう充分だろう? 自由なんてこれ以上知ってしまっても君が辛いだけなのだし、それにもし皆が本当の君を知ってしまったら大変だろう? 迷惑をかけてしまうからね。そんなのは君だって嫌な筈なんだしさ…。 だから、もう…、檻の中にもどろう?」 「…ッッ!!?」 ガリッ。真珠色の歯が綱吉の頭部に咬みついた。 指先の力も篭り、どんどん爪先が食い込んでくる。 雲雀の突然の暴挙に綱吉は目を見開き水膜をはりながら弱弱しくあえいだ。 「……………好きだよ。僕の為に生まれた十三番目の汚らわしい猫憑きの綱吉」 (終) アトガキ もしかして…、もしかして私は骸よりもヒバリさんの方が業の深いいきものと捉えてるのかしら!!!? (とゆうか、本当にフルバのあきとさんがヒバリさんに見えてならないんですけどーーー!!!?/爆) 2006/10/09(初出::2006/09/07) |