愛してるって、せっかく…、言ってくれたのにね。











Canon












いつだって彼を裏切ってしまうのだ。……いいや、裏切りというのは正しい言い方ではない、きっと、 それは後ろめたい気持ちだからそういってしまうのだろう、そう、きっと、……心が未だ温もり灯っている様子だから。
彼はカタカタと震えてまるで満月のようにまんまるに両目を見開いた。…すきですよ。 唇がそっと謝罪のようにその言葉を象った。ええ、愛しているのです。あなたを激しく激しく尊く…、すべてから 守りたいとすべてから隔絶してしまいたいとすべてから目を背けさせて何も目にうつさないで声をもらさないでと 懸命に祈ってしまうほどに…、ああ、なんて滑稽だろう。いつだってそんな貴方を求めてそんな貴方を得ることなど 出来ないと骨身にしみているというのに。そうして繰り返しまうのです…、苛立ちと猛烈な嫉妬からの虐殺ばかり。 貴方の心を遠ざけること。どんどんと悪循環に廻っていく、まわって、まわりつめると追い詰められた貴方。 そこまではきてしまっては終わるしかない。貴方がいないと生きていけないのに。それをよくしっているのに貴方。 なにも始まらないとよく知っているけれども。それでも、それでも、それでも…、いつだって その細い肩に両手を置いて貴方の額に額を擦りつけ請うてしまっている。終らせないで。あなたはないた…。



「……おれは、いつだってお前のいないところで終る筈なのに…、如何して?……如何して今、おまえは眼の前にいてくれるんだろうね?」































俺はいつだってあいつの知らないところで終わるのだ。(あいつのせいで。)
そっと、静かに、そろりそろりと、こうべを垂れてじっと待ってしまう。 悪あがきなどせずに従順に無気力に。魂はもう終わっている。 肉体が諦めるのを生まれた瞬間から待っていたような気がする。 そうだろう、俺はもう幾百年も前から諦めてしまっている。 その姿はときに達観さを滲ませ聡明さをおぼろに星屑のようにちりばめ老成した瞳が知的にも見えさせるのだろう。 だが違う。疲れているだけでしかないのだ。 遠い昔にただびととして埋もれようと誓った意志もなにもかもがぐるりと暗鬱な気持ちに囲われてしまっている。 いつも終わりを知っている。静かにといつも苦く祈りわらう。
あいつはいつも俺に追い縋る。

何故だろう。
いつだって一番に愛するのはあいつじゃないのに最後にも最初からでも選ぶのはあいつばかりだ。 大事なひとがどれだけ泣いてもあいつに縋られてしまえば俺はあいつを許し共に歩んでしまう。 あいつは俺を誰よりも一番に愛してもあいつは一番に自分の感情を最優先にする。 いくら宥めても慰めてもいつだってそんな言葉があいつの気持ちを動かしたことなどない。 いつだってまっすぐにそれない感情の…。 俺のことばかり考えながら俺の願いなど思いつかない愚かな蛇。俺は何度として訴えただろう。 もうしまいにしようと。もうやめようと。あいつはいつだってわらいながら耳も心も閉じた。


(……俺は一体、誰に試されているのだろう?)
「一体如何して、俺はそんなにもお前を甘やかしてしまうんだろうな?」



あいしているよ。その言葉で殺せるのなら何度だって囁いてやる。銃口を突きつけながらおれはないていた…。 多分もう、次回においておれはお前を忘れてしまっている…。愛していたよ。もう、こんな気持ちにも為らないんだ。











(終)











 アトガキ
携帯でぽちぽちとやったもの。 これが『天国より野蛮☆』の前世編だったらどうしよう!!?(…………)
2006/10/15