ひよこマーチ☆












「いやんなのぉーー!!!」
「いやんじゃない!!仕方ないだろう!!?」

うええーんと泣き喚く幼い女の子に綱吉は心を鬼にして叱りつけた。 これが躾だ。大変心臓に悪いものであるが、それがこの幼い子供の将来の為。為になるのだ。 いつかは理解…、そのいつかはどれくらい遠くの出来事であるかはとりあえず置いておいて、 とりあえずこれが躾なのです。
綱吉は心の中で固くうんうん頷きながら、再度ちいさな髑髏の額にデコピンをした。

「いたいのぉ…」
「いうことをきかない悪い子にはお仕置き」
「さっきもしたぁ」
「まだ我侭いうからだろ?」
「いってないもん!」
「い、…………」

いってるだろ!?バッと飛び出しそうになった言葉をぐっと堪えてゴクリと飲み込む。
堂々巡りになると気付いたからだ。
綱吉はスーハーと深呼吸をして気持ちを切り替えると、 うぐうぐと涙ぐみながら反論してくる幼い子の頭にポンと手をのせた。 笑顔を顔にのせながら。……多少の引き攣りはあるものの、 そんなものは涙で滲んだ視界ではわからないだろう。

「幼稚園、いこうね…?」
「い・や!」

即答かよオイ…。
しかもさらにイヤイヤと頭をぶんぶか振ってくるからこれはもう相当意地になっている。 なんでだ!なにが一体不満なんだよ〜!!綱吉は笑顔のままビシッと固まりながら(※青筋立てながら) この我儘ムスメっこの首根っこを掴みあげて有無を言わさずにぺいん! と幼稚園の門へと放り込みたくなってきた。
なんだって今日に限ってはそんなに嫌がるのだろうか。
綱吉は大仰に溜息を吐くと、ポケットの中から飴玉を取り出した。いちごみるく味。 髑髏のお気に入りだ。それをいつものようにくるっと包みから取り出してピンクのまるい飴玉を髑髏の ちいさな口の前へともっていってやる。するとぱくっと指ごとかぶりつく…。 おまえは…、綱吉はこの度に何度となく髑髏にくわれる。慣れた…。 どうせちっちゃい子の口だし別に咬みつくわけじゃあない。 でも、せめて。…………手でとるとかな?あるだろーとか思うのだが、 相手はちいさい動物だ。いや、子供だ。あきらめた。
髑髏にかぶりつかれた指先をシャツで拭うと、とりあえずかぽんと黄色い園帽をかぶせる。 ころころと甘い飴玉を幸せそうに舐めている髑髏の紅葉のような手をひっぱり、玄関から出る。 とじて、鍵をかける。髑髏のカバンは綱吉がもっている。忘れ物はないはず…。 髑髏は綱吉にゆるゆるとひかれるままに歩いていく。

(なにがいやなんだかなあ…)

わけわかんねー。後ろ頭をぼりぼり掻きながら、ちょこまかと歩く年のはなれた妹をの頭をみつめる。
髑髏は綱吉になついている、 なにごとも一生懸命だしなんかぬけてるしでもすごくかわいいし好きだ。肉親の贔屓目かもしれないが、 将来かあーなりな美少女となることは絶対である。 ……正直、綱吉は髑髏がかわいくて仕方なかったりする。嫁にいったら絶対に泣くだろう。泣く。 すごく、うざいくらいに泣く。綱吉は髑髏がとても大事だ。髑髏だってそれはわかってる筈だから。

(……なのになんでこんな困った我儘を。)

髑髏は大人しくて言うことをきちんと聞く素直な良い子。可愛くて仕方がない。
今日だって綱吉はどうしても帰りがいつもより遅くなってしまうから、 髑髏の見たいアニメの時間に帰れそうになくてすまないなあと思ったから 骸に頼んでお迎えに行ってもらうようにしたというのに…。
なんでだ。
綱吉は真っ青な空を見上げて、このちいさな頭につまった思考回路の不明瞭さをこっそりと嘆いた。







(終)











 アトガキ
某所に投下したのをほんのちょこっとだけ加筆修正〜。髑髏ちゃんは骸がいやなんですよ!(気付いて!)笑
2007/05/27(初出:2007/05/05)