「なんで殺したんですか貴方は…!!」


綱吉の激昂はすでに雲雀には予測出来ていたことだった、しかし 出来ていなくても雲雀にとっては別に大したことでもない。ただ目の前に綱吉がいる。その状態に 何の変わりもなければ良かったのだ。
何故ころしたのか。
綱吉は問う。いくらだって問う。その度に雲雀は答えていたような気もするし、また黙秘していたような気も する。曖昧だ。この点に関してはいつだって記憶が曖昧だ。綱吉の表情さえまっしろとなる。
何故ころしたのか。
綱吉はやさしい。とても弱い。かなしい。それでも強い。まちがえない。 雲雀はじっと綱吉を見据えた。綱吉のこんな顔は今でしか覚えてられない。きっと次の瞬間に ぱっと忘れてしまう自信さえあるのだから…、雲雀は無意識に口の端を歪めてしまっていた。 自分はわらっている?無表情の形の心は問う。此れは…、そう思考しながらもじわりとこの現状を 脳が忘れようとしている。ぐらぐらする。じわりと、何処か、片隅が、焦げ付くような、…でも溶けていくように。 何も無かったように。
まっしろく。
君を。

……これはやさしさか?
戯言がぷかりと気泡のように浮かぶ。
浮かんで、パチン、とはじけた。

(君はつくづく例外的な存在だ…)

もうすでに雲雀の中で先ほどまでの綱吉の表情などすっかり忘れ去られていた。 ただ目の前には綱吉とした形のぽっかりとしたものが。雲雀はいつものように定位置にあるだろう掌を とってさっさと歩き出した。連れ出そう。連れて行こう。

「僕は君が好きだよ」


綱吉はいつだって逃げ出したい。そんなことわかっているから求めているだろう言葉など絶対に与えてやらない。



(終)











 アトガキ
某所に『ヒバリさんの誕生日ーー!!』とかで5月5日にアップしたものだけれども何がどうアレなのかわかりませんね! 2008/01/01