まがいものの白めが…!! ギリギリと真っ赤な爛れのような魔物の目が怒り狂った目で叩きつけるような眼差しで喰らい付いてくる。 まるで猛然と噴き上がるマグマの目。気配。ドロドロと闇色の炎は憎悪と狂気を含んで彼を激しく急きたてている。一言一言をぐわっと毒蛇の威嚇のように大きく口を開けて叫んだ。殺してやる!!彼は全身でコロシテヤル殺してやる悉く滅して滅して消してやる!!と叫び急いでいた。魂の緒さえ残さないといいきる苛烈さ。烈火の如く。堪えきれない限界以上まで膨張し蝕み成長を続ける暗黒を胎の底に宿して噛み付いてくる。幾度も、幾度も、幾度として…。 ふう、溜息ひとつ。対して彼は落胆といった風情で彼の姿を眺めた。 ゆうらりと冷酷な目。ゆれる。それが白蘭の彼の双眸に抱いた最初の感想だった。 ゆうらり、ゆうらり…。遠くに想いをはせる冷酷。冷たく厳しい。…それが好みだったといえば好ましかった。 あれほどに慎ましく幼い激情もなかっただろう。 「しろ…。君の彼へ想う色は白色、かな。白が赦せない。白が愛しい。君の矛盾は美徳だ」 ……そんな目玉、くりぬいてやろうか。 尚も真っ赤なドロリとした亡い者を想い嘆き追従したいと復讐したかったのだ殺してあげたかったのだという瞳。 白、か。 白蘭は白が好きだ。葬列の花の色。葬送の白。雪。冷たく凍えて。儚く。血の気のない薄気味悪い色だ。 「彼は、…あの子に似合うのは赤だったよ。黄金に輝く闇色。彼は瓦礫の王様なんだから」 ブン!と耳の横を掠める刃。力の差は歴然だった。ひとつも当らず白蘭の攻撃はすべて当る。 ズタズタでボロボロなのに、輝く。殺意。号泣。咆哮。 ……とてもつらい。 「君を殺してしまわないと君は冷たくならないんだね…」 ゆうらりゆうらり…、心の中に水がたまり揺れる。ゆうらりと君の目で満たされ冷たく身体中を甘く浸透させていって…。 ほしかった。 なににも屈さないと虚勢を張った恋の奴隷の高潔さを汚すのは彼の死でも血でもなくこの手だった筈なのに。ひどい話だまったく。 (終) アトガキ ツナ骸前提とかゆー…。笑。 2009/04/01(初出:2008/02/17) |