我が家のクリスマス










「…あの方は昔はコーヒーはブラックでしか飲まなかったんですよ」

ぽんぽんと宥めるように綱吉の頭を撫でてやりながら霧はやれやれと優しい苦笑を零した。ねえ綱吉さま。まんまるい目でぱっと見上げてきた綱吉の頬をにっこり笑いながらぴたぴた撫で、はいコーヒーですよとマグカップに四分目くらい入ったブラックを目の前に差し出す。
「貴方が、昔いれたんでしょう?お砂糖いっぱい入れて愛情をこめたって。ね?」
霧の笑顔はふんわりと天女のような美しさで慈愛に満ちている、…だが今日はより一段と華やかで白い百合のようにしとやかで綱吉を見つめる目は殊更に優しくて温かい。…ああ、困らせてるなぁと綱吉はツキンと痛感してしまうのだ、彼の絶対は綱吉の祖父で家康の機嫌は今綱吉の手にかかっているのだ。しおしおと俯きながら、マグカップを受け取る。熱いですからね、という言葉にはほのかに安堵した色が浮かび上がり、…そっと霧の手は綱吉の肩に伸び、ぽんっと軽く叩いた。
(…この人絶対俺が面食いだと思ってる…とゆかじーちゃんと顔の趣味一緒だとかかな)
さあ砂糖ですよ〜とドンっと砂糖壷がテーブルの上にあがる。
「………糖尿病になるくらい入れるから」
「いっそそんなものでもいいから病気になればいいんですけどねえ」
綱吉がせっせと小型のスコップのようなプラスチックで出来た砂糖用匙でもってカップに砂糖をもりもり入れながら苦々しい呟きを落としたが霧はほろりと諦めの言葉を零して返した。家康はまったくの病気知らずだ、霧の知る限りでは。
「……そうだね、真冬の真夜中に真っ裸で俺の布団に入り込んで朝起きた俺に『クリスマスプレゼントだよ』とかいえちゃうくらいだもんね…」
あんな変態、風邪だって逃げるよね!綱吉は若干?キレ気味にドザザーっとついには砂糖壷を持ち上げてひっくり返しマグカップさえも砂糖盛りの中に埋めてしまった。
「…綱吉さま、ファイトです。大人になって…!今はほら!あの方今度はテレビ壊しそうですから!!」
「………」
チッ。綱吉はがしっとマグカップを砂糖漬けの中から取り出すと完璧にぶすくれながらしぶしぶと台所を去ったのであった…。 沢田家康によってクリスマスは最悪なスタートであるが…とりあえず日々はいつもこんなもんなのでこれもまた日常のひとつなのであった。











(終)







 アトガキ
加筆修正しようかなとおもったけどなにからしていいのかわからず結局原文っと!!爆
2010/02/06 (初出:2008/03/08)