氷 雪 女 王










どうんと爆音が地響きをたずさえて髑髏の背後から盛大に噴き上がった、そうして爆風がびゅうびゅうと背中を押してきて耳鳴りのひどい中をかきむしるようだった。ボス…!!!髑髏の胸の中も渦を巻いた突風が巻き起こる。世界で一番だいすきな笑顔の彼がいたはずなのだそこに。振り返ることがこわくてでも振り返らずにおられず髑髏はぐりっと腰をねじって構えた。槍をもった手が震えて不安を押し潰すように強く握った。
「つなよし…!!!」
「、うぉあ…っ!?」
ドウンと重苦しい音がまたなってひとの背中が眼前にとんできた。まさしく飛んできた。見間違えようもない薄いアイボリーのスーツがくるっとねじれて髑髏のななめ後方へとずしゃあと降り立ち腰を屈めてズリズリ靴底をへらしながら更に後方へすべっていった。アスファルトが砂煙をだしている。破片もちらばっていた。綱吉はふるふると土煙をかぶった頭をふってすぐさまきっと顔を上向けた。
「髑髏!!ぼおっとしない!!」
「は、はい!!」
「援護!!」
「了解ですボス!!」
ボッと両手に炎をごうごうと灯して綱吉が飛び立ち髑髏は槍を握り直しひゅん!と旋回させると杖で地面を突いた!ガツッとそのひと鳴りと共に地面が割れて業火の柱が天を突く。銃を持った黒服の男たちが怯む。続けてまたひゅんひゅんと槍を演舞のように振りまわし今度は袈裟掛けに切り落とすように振り、すると毒蛇がじゅるりと髑髏を見つめる敵の足元に現れまたこんこんと溢れ絡みついた。それはビルの狙撃犯も例外ではない。髑髏を中心に100メートル範囲の敵すべてに絡まる。
髑髏の瞳は冴え冴えとしていた。長い黒髪がつやつやと煌めき陶器のように滑らかな頬が僅かに揺れて彼女はふわりと微笑む。
地獄の業火のような火柱が天を何本も突き刺す。ごうん、ごうんと地響きが増して灼熱があたりを真赤に照らす。夕日に染まるよりも真っ白く赤く爛れたように目が潰れそうな光景だ。そこで絶世の美女がニコリと微笑むのだ。まるで白雪姫のように黒檀色の髪と真赤な唇で氷の女王のように冷たく不思議と可憐に。
「よかった。ボスいきてた」
彼女の周りはドス黒い悲鳴と轟音に溢れていたがその声は何の関心もなく冷たい清水のようにすいっと空気をすべっていった。





(終)











 アトガキ
近況メモにてアップしておりました。ボスツナと美人秘書どくろちゃんとかいいよね! 愛人関係にみえて純愛とかもいいよねいいよね!!(笑)
2011/05/13 (初出:2010/04/10)