飽食の季節を目指して。










生 き 餌












「………昔はどちらかといえば可愛いらしかったよまるで玉子焼きのように」
「ヒバリさんにとって俺はなんだったんですか……?」

中学の時から突出して氷の美貌なんかを持っていた彼が青年になると其の鋭さや艶めいたつめたさは 残酷なまでに存分とキレイに磨かれ抜かれてしまって、今では素晴らしいほどに極上の美しい魔物に仕上がってしまうのだ。 されども人間。やはり人間であるからして、その腹からはぐるるぅ…と空腹を訴える音がちゃんと大きくなったりするのだ。

「だから……」
「ゴハンが食べたいならそう言ってくださいよ!!も、もう、ホントにお願いですからぁーーー!!」

や、め、て、く、だ、さ、いーーー!!!!!
くいっとツナの顎を繊細な指先で上向けさせてきた時から…、その時点でもう手遅れだったろう。 ツナは逃げ場を失って近付いてきた端整な顔を必死の想いでググググググ…ッ、と押し返すしかないのだ。 彼の方が断然に力が上回っているというのに。
……ああ、その盛大な腹音が本当に獣がグルグルと喉を鳴らして唸っているように聞こえますよヒバリさん。

「だから、獲物がね」
「俺を見て笑わないでください!!!!怖い、怖いですからぁ!!!!」
「……………ぁ、」
「う、っわ!!だ、だ、だ、だめですからぁ!!かじるってのはまったくもって無しの方向に勘弁お願いします!!!」
「うん」

ニッコリと微笑みながら瞳はまさしく猛禽の類でしかない、なんて美しい傑作品だろうか。
魅惑的に微笑みながらもギラリと獰猛な牙を覗かせるだなんて本当に素晴らしい魔物のひとだ。

「でもね、今どうしても痕をつけたいんだよ。だって君は僕のものなんだろう?」
「……………あ、あのですね!!だ、だからって無理やりとかっていうのはどうなんでしょうか!!!?」

「おもしろいけど?」
「……い、いやだ…、だ、から…………、」


すきですよ。
その顔がすき。声がすき。暴力的で。なんでこんなにこわい人が好きなんだろうって、本当にマゾみたいだ。
すきだよ。
いつか全てを噛み砕くだろう闇色の魔狼みたいな人だけど。

『 ……その時は、どうか全て残さず全部を貴方の中に封じ込めてください。 』


「君は昔から甘い肌をしていて美味しいんだよ」
「……い、いたいんですけど…。ったぁッッ!!?」




(でも、きっとそんな日は来ないんだろうなぁ……)


餌付けされてしまったんだこの人は。そして俺はまだまだ幸福な生餌のまま。

(終)











 アトガキ
ツナ高校生ヒバリ大学せい……?(なるのだろうかこのひとは)
2005/09/28