とんでもパラレルです。
ツナ骸絵チャ(笑)にて『こんなパラレルやりたいなぁ』とポロリとこぼしてそんで かけっちゃんが書くからいいやあと待ちの体勢はいってましたが、 なんかムクムクしてきた(!???)ので、とりあえず書いてみるのだ!!
わたし、実は………、青年と幼女って組み合わせが大好物です。
ツナ骸にモエモエして即興考えたものプラス今週のジャンプ展開練りこんでます。
(ここらへんで嫌な予感された方、多分それあってると思うよ☆)

ちなみに。
ツナは骸にデレデレですから。
そして一応ツナ骸ですー。ヒバリさんは少年でーす。(え!?)

あとツナの能天気さが常よりも倍です。とゆうかこのオツムのなさはうちのヒバリさんの専売特許だったのでは? とかなんとかなぐらい……。(ヒバリのオツムのなさがとうとうツナまでにもかぁ…!!!/汗)
そうして骸さんは猟奇的ですあいらしく。(は?)































A c a n t h u s












へまをしたのかもしれないのかなぁ…、とか思いつつも責任は自分がとるだけなんだから別に 誰も迷惑かかんないじゃんとか思った。自業自得なんて言葉は本当なら忌み嫌う所なのだが、 今回は割と受け入れられることが出来るのだ。ツナはひょいひょいと暗がりの中ゴミゴミした場所を身軽な子供のように駆け抜けながら ぴったりと後ろからじりじり迫ってくる気配に対してへらりと口元をゆるませてしまう。うん、いい感じだ。

……思えば。逃げるという行為はいつも泣きながら濡れながら必死で、その上どうしようもなく寂しくて哀しくて、 そしてとても怖かった代物だったというのに。それなのに今ではどうだろう。ねえ、ほらほら。 昔はそんな思いばっかりしていたというのに今ではこの瞬間になど微笑みさえこの口許を彩るのだ。

(……あと、もう少しかなぁ?)

ヒュン、ヒュン、と。闇の中次第に速度を上げながら駆け抜け続けると 脳裏にあるもうひとつの目がチカチカするような感じがしてきた。ああ、あの子だ。…それと、彼もだった。 ツナはそれにヒッと喉奥を刹那ひくつかせたが、…ああ、でも仕方ないかなぁとコソリと溜息吐いてすぐに諦めた。
タン、と地を蹴るとコートの裾がふわりと舞った。ツナは狭い路地裏で続けてタタン、タタン、と リズミカルに交互左右斜め上へと壁を蹴り飛んで空に向かう。優雅なまでの滞空時間。ふわりさらりと広がり引いていく コートの長い裾のせいか、まるでツナの細い背には翼が生えているのではと 思わせる程に彼は軽やかに屋上へと駆け昇っていった。
決して通常の人間には出来ない跳躍力、妖精か天使のような身のごなし……。 だが、間違えてはならない。彼はそれゆえに追われる立場となっているわけではないのだから。

ひゅっと最後のひと蹴りでツナは遥か屋上のフェンス上まで飛んでみると、……ああやはり。
黒衣を翻らせた少年が不機嫌そうに立っていた。月明かりはとても眩く、 黒髪に縁取られた白い肌はまるで真珠のように貴く美しかった。


「遅かったね綱吉。君は何処まで買い物に行くつもりだったの?」
「う…ッ」

カシャン、と器用にフェンスの上に着地し、ついでトンとコンクリートの上へと滑り降りる。ツナはへらりと 愛想笑いを浮かべながら麗しい少年の苛立たしげな視線を恐々受け止めた。

「今日のお昼御飯がそんなに気に食わなかったのかい?」
「い、…いえ…そういうわ」
「ん?」

わけじゃないんです〜!とかなんてまで言わせない壮絶な超美麗笑顔がツナの目の前にどっしりと ドンドロと極悪な気迫渦巻いて在った…。う、うわぁっ!怒ってる怒ってるおこっていらっしゃるよぉ!! ツナは刹那にご機嫌伺い笑顔のままドバッと冷や汗を噴き出させていた。本当に。 スゴゴゴ…ッなんて擬音が聞こえそうな程に彼の瞳は獰猛だった。ツナはひっ、ひっ、…と 妊婦さんの出産時の呼吸法の出来損ないみたいな声をだして、じりじりと 思わず後退してしまっていた。
だが。
自分よりも多少小柄なだけの少年の零度にまで冷えた眼差しがキロリと動いた瞬間、 ガバッ!!と勢いよくも即座に平伏して自らでその場に縫いとめてしまっていたのだったが。恐怖政治だ。ツナは 冷たいコンクリートに額を擦り付けながら、……みっともなくも思わずわっとと泣き出しそうだった。

「も、も、もももも申し訳ありません!!俺の失態でした!!俺が勝手にうろちょろしちゃってましたぁーーー!!!!」
「そんなの毎回でしょ」
「ぅぐ!…い、いや…、本日はね、それはね、あ、あのね……え、っと、そのですね……」
「うるさいよ。ちょっとは黙りなよ」
「いや、ほんとにね!!俺はヒバリの」

ビュッ!と物騒な彼愛用のトンファーがツナの頭上振られた。黙れ。ぞわりと肌が粟立つ。なんという圧力だろう…。ツナは恐る恐る顔を 上げた。すると少年はもうツナのことを欠片も見てはおらず、さらりと長い黒衣の裾がツナの目の前を塞いだ。 …ああ。ヒバリ。ツナは先ほどとは打って変わったひどく静かな様で自分を庇うように立つ少年の名前をすまなそうに囁き、 ゆっくりと、ゆるやかに立ち上がった。
……来たのだ。ようやく。

「君は、本当に拾い物の天才だよね」
「…え?これって拾ったことになるんですか!?」
「ああ。君は独りで出歩くと必ずこういった手合いを持ち帰ってくるじゃないか」
「持ち帰ってって!俺は好きでこんな」
「うるさいよ」

ビシリ。冷たいつるりとした鋼鉄の棒の先端がツナの目の前に瞬時に現れた。ピッと風圧だけで頬がヒリリとした。 ツナはやれやれと溜息つきつつ笑うと両手をひらひらとあげた。降参です。あなたのおっしゃるとおりでよろしいですよ…。 盛大に不服なのだが。

「今回は三匹。使い魔だね」
「みたいですね」

まっくろでべたっとしたようなドロみたいな毛並み。大きなアギトとピンとした三角耳。 多分元は狼なのではないだろうかとツナは思う。四本足で地を駆けているのだが、よくよく足元を 見てみれば鷹のような足だった。尻尾もじぃっと眺めてみれば…、どろっとした形だからぱっと見では 気付かないだろう。孔雀かなにかの尾羽っぽかった。でも多分ベースは狼だきっと。翼はなかったから。

「聖水があれば楽勝だよコレ」
「……持ってないでしょヒバリ。神父なのに」

三匹の獣たちはじりじりとツナと少年の間近へと迫っていた。彼らはヒバリがただの少年ではなく、 何かしらの力を持った人間だと感じていた。だから慎重さを持ってグルグルと唸りながらゆっくり迫る。

「ああ。僕はそんなものを使わずに倒すのが好みだから」
「普通は神父さんそんなことしないんですけど……」

とはいってもツナに『普通の神父』というものと面識があるわけじゃない。神父とは 何だろうという疑問もあるのだが、しかし。彼みたいな神父がそこらに居るわけがないということだけは しっかりとよく、それこそ朝陽は東から昇るという世界の常識くらいにとても解っているつもりだ。 こんな生殺与奪をモットーにしているような人物が 神父というものだったら彼らのドンであるイエス様なんかはどえらい悪辣王じゃないか。 そんな人誰も崇拝しないって!!
だから神父として規格外なのがヒバリの方なのだ。きっと彼はこういう人外の生き物と戦いたいから こういう職に就いたのだと思う。……だから、自分なんかのお目付け役になってしまったのだろうと、 そう思うとツナは多大に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。だが、実際助かってしまっていたりするから 日々目に見えない重りや枷が嵌められていくように何だかんだと彼には後ろめたい気持ちいっぱいで 逆らえないと……。いや、この性格だったらそんな事関係無くとてつもなく逆らえないのですが。

「僕は普通じゃないしそこらの街角神父と同列に扱わないで欲しいよ、この『教会認定保護指定動物』?」
「………う」

俺は吸血鬼であって動物ではないのに…と出かかった反論は勿論彼の剣呑な眼差しの前では唇から 零すことは出来ない。動物。吸血鬼というものは生き物ではないというのが教会側の認識で、『動くもの』 というのが妥当な表現だったらしい。動物。そう表現されるくらいなら大変不名誉的だが『教会認定保護吸血鬼』にして欲しいと 思うのだが、しかしツナは『吸血鬼』としての正しい機能を持っていない。持っているのは 大層迷惑の代物で…。だからこそ同族から狙われる以外にも各方面に狙われてしまうような標的 となってしまったのだった。
そうして何十年かそれ以上の年月を逃げ回ってようやく保護された場所が教会。……教会だ。 おいおい、俺ってば天敵のお膝元でのうのうしちゃってるよ!と吸血鬼としての性がものすごく 懊悩を運んでくるが、まあ元々が楽観的姿勢なツナである。うん、まあいっか!でのびのび生きている。 ……いや、お守り役に付けられたヒバリ少年のおかげで日々細々っぽいのだけれども。 でも逃げていた頃と比べればかなりの雲泥の差で幸せでございますよ。現在の方が。

(……あれ?)

ツナは使い魔に向かったヒバリとは別方向に視線を這わせた。……あれれ、そういえばあの子がいないなと。 いつもならこういう場に一番駆けつけてくれるのが可愛い可愛いあの子なのに。そして自分は其の 慣れ親しんだ気配を辿って向かうのに。今回だってそうだ。迎えに来てくれたんだあと駆けてきたのだから。

「骸…?おーい、骸ー?」

くるっと背後を振り返ってみても何処にも居なかった。あれ?確か自分はあの子の気配を辿ってきた筈なのに。 カンカンキン、バキャッ!と楽しそうに殺戮に興じているヒバリに聞くのもアレなので、ツナはタタッとフェンスの上に スイッと昇った。そこから一望しても居ない…。

(ま、まさかなぁ…)

居るはずの骸が居ない…。そういう場合はあまりよろしくない事が起こる前兆といっても良い。 そういえば最近ムッとした表情を見た。犬猫の匂い付けみたいに自分に身体を擦り付けやたら何度も何度も首やら手やら指に いたるまで噛まれ舐められた。

(だからこんな雑魚相手なのにヒバリがいる…?)

瞬間。ビリリッと肌が冷気と嫌悪で鋭く鳥肌立った。まるで強い電流が流されたように 右腕が骨を中心として肉がぶわっと小刻みにぶれたみたいな感覚。ツナはハッとその場から飛び退け、 着地後すぐさま上体を低くしてヒバリの元へと駆けつけた。彼はそれに構ってる場合じゃない。そして 自分は遠くへすぐさま逃げなければならない…。ひどくヤバイ。 ツナはガッと交戦中の少年の細い腰に腕を巻きつけ強制戦線脱退させると そのまま軽い躯を肩へ丁寧に担ぎ上げてダッと一気に隣接するビルの方まで高く遠く飛んだ。 ……鼻の奥がツンと痛い。背中がピリッとした。耐え難い生臭さにツナは軽く咳き込んだ。

「…………鈍過ぎるね君」

わお、高く飛ぶねえと呑気に呟く彼の言葉。……うん、鈍いんです俺。とツナはそっと目尻を拭う仕草をした。 呆れた溜息が耳元にふっと掠めた。もう近くにいるから、と。のんびり言われた。この夜風みたいに冷たい。

「其れにそんな君の行動をあいつが読まない訳がないだろう?」
「へ?…あ、ぁ、……あああーーーーーー!!!」

次の着地点は先ほどのビルから大きな道を挟んで三つ程向こうだった。誰も居ない筈の屋上。点だったものが、 黒色だったから見え難かったものが…、ツナは次第に明らかになるその全体像を青ざめた顔で見据えた。どうしよう どうするべきだ! そして動揺している隙をついて抱えられたヒバリはするっと腕の中から抜け出し身体をしなやかに舞わせ ドンッとツナの背中を両手で力一杯に押した。彼としてもあんまり気乗りしない事なのだが、完全に退路を閉ざしてやるしかないだろう。 こうなったら。

「ぎゃああぁーーー!!!」

空中でいきなりあんな事されたら無様に落ちるしかないツナは見事に落ちた。べしゃ!!と顔…、は何とか庇って身体から。 一方ヒバリは器用にくるっと回転を加えながら美しく着地を為した。ツナはしたたかに打ち付けた躯も なんのそのですぐさまガバッと起き上がると咄嗟に逃げに行こうと動いたが、しかし、しかしながら…。 待ち構えていたあの子。黒のふんわりとしたフランス人形のようなドレスを身に纏った大変美しい少女が 許すわけがなかったのだ。ガッ!とはしたなくツナのコートの裾を踏んで、彼を再びすってんと転ばした。 ふぎゃっ!と変な叫び声をあげて今度こそ顔を、主に鼻を強く打ちつけていた。

「ふふ、いらっしゃい綱吉さん」
「…あ、あ、あの…骸!!?」
「だってもうすぐ敵さん来るんですもの。僕がやらなきゃねvv」
「いや!ヒバリいるし!!」
「だって前回の譲ってあげたんだから今回は僕の番なんです!」
「でもダメだから!!俺すっごく嫌だから!!」
「僕はすごく好きですからv」
「だ、だからぁ!俺いったいの嫌いなんだってばぁーー!!!」
「いいじゃないですか一瞬ですよ?それにあとは僕が痛いだけなんだから」
「いーやーだー!!!」
「はいはい、痛かった右手あげてくださいねぇ〜」
「あげても歯医者さんは止めないものだよ!」
「はい。僕もで」

す。といいかけて少女の色違いの双眸がキンと凍った。だが口元だけがふわりと花のように…。 微笑み浮かべて彼女はすっとツナから遠ざかった。綱吉さん危ないですよ。そういって闇の中に埋まった。

「え」

…ゾクッと背中が鋭く震え、そうして彼女の答えを知った。ツナは本能的に横に飛んでいた。獣の声。 ヒバリの繰り出す打撃音。たった今ツナが居た所には奇妙な異臭が漂いジュッと焦げていた。うわあ…。 ツナは視線を感じて顔を上向け月を仰げば月光を背に美しい女が緩やかに微笑みを浮かべて、ツナに細い手を差し伸べていた。 ……ああ、この人が『人間』だったら誘われてもいいなと思いながらこんな時でもメンクイ発揮の ツナはひくっと片頬をひきつらせた。 だって彼女の手にはごっつい蛇が巻き付いているんだもの。

「ごめん。俺は行けないから」
「ええ、そうでしょうね。貴方はいつだって逃げてばかり」
「殺されたくない」
「殺しはしません。ただ、誓いを」
「出来ないよ…」

女は殊更深く微笑んだ。じゃあ、仕方ありませんねえ…なんて言葉とは無縁なように嬉々とした顔だった。 彼女は滑るようにするりと闇の中を溶け込むように空を飛び、貴方に恨みなんかありませんからと 平然と嘘を吐いた。細い腕からビュルッと鞭のように蛇の首が伸び真っ直ぐにツナに向かう。すいっと 避けたが相手は鞭じゃなく蛇、するっと曲がってくわっと牙がツナの目の前間近で披露され其れにツナは 短い悲鳴をあげた。おいおい、一生懸命逃げないと駄目じゃんか!と脳裏で零しながらツナは慌てて ダダッと走り地を蹴り、ふわっと空へと逃げた。

ツナには昔の記憶がなかった。
ただ解るのは自分が吸血鬼でありながらも決して吸血鬼が持つことのない能力を得てしまっていることを 何十年も逃げ回ってようやく知り得たという事。 だから何故そんなものをこんな自分が持っているのかと今も尚根強く誰かに叫んでいる気がする。誰かに、それはもしかしたら 神という名の者だろうか。悪魔も神の被造物だと教会の誰かが言っていた。ならばきっと自分も神の思惑で 作られた悪魔で、……決して熱帯魚のように遊ばれた色を纏ってるわけじゃないと思いたい。

(骸…)


ヒバリも。多分ずっとは一緒に居られない。


(なんとも切ない身の上なんだろうな…、俺は)




女の攻撃から逃げながら、どうしようかと思う。きっと逃げ切ろうと思えば逃げ切れる。殺されないと決めていた。 でも、どうしようか?朝陽を自分は浴びれる事が出来る。でもあまりがむしゃらに逃げ回っておうちに帰れなくなった だなんて情けなさ過ぎる…。ここは苦しいが、この近辺をずっと走り回るしかないかなぁ…。 ツナは疾風のように駆けながら女の気配を見やった。彼女はちょっと自分よりも遅いようだ。 なんとか足止めしようと必死で、多分ツナが逃げ切る可能性をよく解っている。だが、ヒバリという 存在がツナを繋ぐのだとも解っている。本当は逃げないのだと、彼女は。

「あら。やはり貴方は少々楽しい」
「…へ?わ、わわ!!」

罠を仕掛けていた。先程ツナが駆けた場所を、足を踏み入れた場所。念の為にと網をつけておいた。 ツナの足がタン、と着いた瞬間に印が発光しついで何百何千の蛇がそこから噴き出し溢れた。 うわぁ!!!ツナは恐慌状態だ。え、うそ、なにこれ!!女の人は素直に爬虫類嫌いで居てください!! と必死に嫌悪と気色悪さに流されないようにしながら強く強く、本当にとてつもなく強く願った。

「貴方は彼から離れたくないのでしょう?心配ですものね」
「い、い、いやぁ!!!そんな心配してませんですともよ!!してるのは迷子だけですから!!!!」

コツコツとヒールを響かせながら美しい女性が近付いてくる。女の人にもてる事が縁遠い自分にとって其れは まるで夢のような出来事だ。が、…ああ、だったら此れ夢であって欲しいんですけどねぇ!!と ツナはぞろりずるずると身体を這いずる感触に泣きながら思った。いやもう本当に死にたくなるから!! すぐさま払い除けたいのに彼らは毒を有しているだろう事はその極彩色の身体から解っているので、 主たる彼女の機嫌を損ねるような事をしてはいけないだろう。う、動いては駄目だ。迂闊に。


「…………まるで、浮気現場みたいですねぇ綱吉さん」



え。冷たい指先がくいっと顎を持ち上げたら聞こえた鈴のような声。目の前の美貌はきょとんとしていた。 あ、ちょっと可愛い。と、いう事じゃなくってぇ!!ツナは背後からズズズ…っと近付く、身体に巻きつく蛇達 よりも尚も恐ろしく巨大な気配を感じた。…お、怒ってらっしゃるーー!!!ツナを拘束した綺麗な おねえさんもハッとなって辺りを隙無く真剣に伺っていた。 その為凍えた眼差しは爬虫類のように虹彩が細くなっていた。うわを。

「………あ、あの、あのね?骸??これを何で浮気現場とか見てしまうのかな?」
「ふふ、そんなのはですねぇ…」

ゴス!!!ツナの目は驚愕と恐怖に見開かれたまま時間が止まった。そうして崩れ落ちる躯。その背後から現れる少女。 彼女の細腕の先にはしっかりと握られた1tハンマーがあり、それでツナは強烈に頭をぶっ叩かれたのだろう。 僅かに血が付着してる辺りにどれだけ非情な力でやられたかが解ってしまう…。だからこそ ツナはぐわんぐわんと衝撃に打ちのめされ白目をむき、……パタンと。その場にゆっくりと崩れ落ちたのだ。 そうして女の目の前にはっきりと現れたお人形のように愛らしい少女は無垢な笑顔でニッコリ微笑む。 ぽいっと何事も無かったように凶器を捨てながら。

「誰?」
「彼の正妻です」

ふふ。このドロボウ猫めが…。というように彼女にとったら見当違いな怒りを口調に滲ませながら少女は 膝を折って倒れたツナの髪にそっと触れた。ああ、誰がこんな惨い事をしたのでしょう! 額を、頬を慈しむように丁寧に撫でていく。 ……とても自分で殴って気絶させただなんて思わせない程に優しい仕草だ。 そうしてそっと。まるで眠り姫に口吻けするかのように恭しく可憐な唇を触れ合わせた。

途端、ビクリと意識の途絶えたツナの指先が震えた。

「?」

女は眉根を寄せた。青年の上からずるりと少女が無機質な人形のようにすべり落ちていく。毒蛇の群れの中 埋まる彼女。女は蛇達に獲物の拘束を命じると共に噛むことを禁じていた。 自分の手でなくこんなもので死ぬだなんて業腹な事この上ない。 ……いや、それよりもだ。 頭から一筋赤い血を零してすうっと立ち上がった青年の面変わりようの方が今は重要である。

「…ほぉら、痛いのは一瞬で僕が痛いだけでしょう………?」

ねえ、と。愛しそうに目を細め掌を見据えそして心臓の上をなぞるように触れる。 花弁のような唇からほろりと零れる蜜色の微笑。まるで別人。 闇の中に居てさえ真白い色を持ち得た彼の笑みが今や妖艶さ滲むその色に塗り変えられている。 ……美しかった。だが同時に酷く禍々しい。クスリと声を出して微笑み深くすれば ざわりと彼らを取り囲んでいた蛇達が彼女の命を無視して逃げていく。

「さぁ、殺し合いましょうか?」

彼女に向けてはっきりと微笑んだ顔は先程の少女の其れと同じであった。

















『…君、さっきも逢ったよね?』

其れは偶然だった。トン、といきなり目の前に降り立った彼に骸はひどく驚いたのを覚えている。
ツナはくりっと頭を傾げ、じろじろと見据えてきた。それこそ頭のてっぺんから足の爪先までも。じっくり。

『さっき、なんかぶれてる人がいるなあってじっと見てたら、…ああ、そういうことなんだ』

なんだ。すっかり納得したらしい彼はニッコリと微笑んで骸のちいさな頭をぽんぽんと撫でた。 足止めしてごめんねぇと人好きするような笑顔でじゃあねと立ち去ろうとする。
そう、偶然だった。
偶然、彼は自分の魂を意識のない他人の身体に宿らせる事が出来る能力を見てしまったのだ。

『…え?』

そうして憎たらしいと思った。
まるで風の中を生きているようだったから、だから…。だからだからだから。白いこの鳥は撃ち落そうと。
枷になってやると決めた。



『  もう、はなれないから…。  』




















「やっぱり慣れないね、ソレ」

そうですかあとアハハ、じゃあ見なければいいじゃないですかとオッドアイの青年は血塗れの姿のままヒバリの 元へとやってきた。その腕の中には可愛らしい形の少女が死んだように眠っている。其れに一瞥よこし、 ヒバリは改めて目の前のにこやか笑顔の青年を見つめてみた。さらさらとした黒髪。命の底を切り取ってきたかのような 深紅の右目。柔らかい線の美貌でありながらも冷たい印象の溶け込んだ奇妙な容貌。 雪解けの頃の川の清水を思い出す。
生まれ変わったような初々しい光に照らされ澄んだ清水はとても美しいのだがこの上なく冷たく響き、命さえ奪う。

「痛みがまだ引きませんから、もうちょっとこのままで居ますよ」
「そう」

じゃあその血塗れの服は自分で洗いなよ、そう言ってヒバリはくるりと背を向けて歩き出した。 彼もまた返り血だらけだった。だが黒衣を身に纏っているから其れ程凄惨な姿に見えない。…いや、それが 神父の着る略式の正装とあっては、黒い服うんぬん以前のある意味かなりの衝撃的な凄惨さだ。

「次は僕だから」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい」

……………………………。














「……あのさ、確か俺、頭に一撃だったような気がするんですけど??」
「今回は強かったんですぅvv」

なんか腕折れますよぉ…とベッドに横たわって目覚めた彼は真っ先に目の中飛び込んできた愛娘にそう言ってみたが、 彼女はきゃはっ☆と笑って嬉しそうにツナの身体の上にのしかかってきた。

「うーんvvやっぱり身も心も一緒になるよりもこうしてる方がいいですねぇvv」
「いっ!!い、いたたた!!骸痛い!!」
「大丈夫大丈夫。もうすぐ治るでしょ?」
「治らない内にこんなんされたら治るのが遅くなる!!」

そうですか?ツナの胸に頬すりしながら上目使いに見つめてみると、彼は、うっと言葉を詰まらせた。
どうせ自分の体のままヒバリと壮絶なバトルをしたのだろう事なんて過去幾らでもあるのだし今更此れがそうだったとしても 現状の何が変わるのだろうか。痛いんだから。

「……骸」
「はい!」
「俺のことは何て呼ぶの?」

だったらいいよ。ツナは痛む身体にギクシャクしながらよろりと腕をあげた。 それでさらさらとした彼女の頭をなでてあげる。骸、お前はね。 ツナは緩やかに優しく微笑んだまま大切な可愛い子だからと囁いた。
骸は一瞬きょとんとしたが、すぐに満面の笑みとなってガバッと上体を起こしてツナの顔を覗き込んだ

「はーい、パパvv……で、いいんでしょう綱吉さん?」
「綱吉さんは余計!」

だってだってぇとはしゃいだ声で骸はまたツナの身体に縋りついた。温かい躯。 呪いの込められた吸血鬼。ずっと傍に居るよっていった。 骸はこっそりと嘲笑の色を瞳に浮かべたが、ツナがあまりにも優しく健気にも頭を撫でてくれるものだから、 甘い溜息ひとつついてその感触に酔った。


置いていかないよ。




それは一体誰の言葉だったのだろう。



















(終)











 アトガキ
まあ、こんなカンジ?あとはギャグでーす。(まだやるんだよ!!)
ちなみにツナと骸の関係は一応おとうさんと娘です。(書ききれてねええ!!)
………それにしても。前半かいてて『これヒバツナじゃねぇ…?』と錯覚してました(笑)
2005/12/3