非道いのは誰だ。









呼び鈴












骸はすぐ御飯を食べなくなる。きっと時間軸がヒトとは違うのだろうと彼はけろりと言う。 夜の方が好きだからといって朝昼と寝ていたこともあれば、三日は全然睡眠を取らなかった事だってあった。 ……そして、今回はなんと五日だ。 さすがにそれはかぁーなり不健康だろうなあと思って綱吉は骸を呼び出しすぐさま枕をその顔にぶつけてやった。 心配させるなこの野郎がなんて言葉と言いたくもないんだよ心配の言葉なんてとか ごちゃごちゃ詰めて思いっきりゴスッと。固めの枕なんて選んで。

「……つなよしくん」

ずるりと枕が落ちて現れた顔は途方にくれていた。数瞬その顔を見つめてやってもその眉が不快そうに 寄せられることはなくて、はあ…と切ないといった色の溜息を骸は零す。 綱吉くん。痛いですよとは続かなかった。 ただ骸は面倒くさげに枕を拾い、しょうがないですねえなんて言ってその場を去った。あっさりと。 さらっと滑るように流れた黒髪の隙間、ちらりと色違いの双眸が綱吉を見つめたが、 それは決して責める色ではなく逆に何処か透き通った水の色にも似ていた。そう、やわらかだった。 それなのに…、綱吉は其れを見た刹那。 今この瞬間に何かの首をぎゅっと絞めてしまったのではないかという錯覚に陥ってしまった。 いいや…、此れはまるでたった一人何処か置き去りにされ迷子になってしまった気分といえばいいのかもしれないが。 いいや、いいや。……そうでもなくそうじゃなくて。 緩く首を振り綱吉はふっと静かに目を伏せた。きっとヒドイのはあっちの方だ。

「だってお前は人間じゃないか…」

例えその姿がただのヒトカケラなのだとしても。自分には其れが全てなのだから…。





心配して何が悪い。





(終)











 アトガキ
え。なにこれ?と本人的にもきょとん。(らぶなのかシリアスなのかギャグなのか綱吉なのか骸なのですかこのひとたち!!)
拍手に置いた突発小説。
2005/12/5