ええと。『アカンサス』のワオ様編ですよ…!!!
もうこれギャグ(※本編)から遠ざかりまくってるんですがねぇえぇええぇぇぇ!!!!?(爆)
あ。バジルさんが出ればギャグかな?(出るんだ!!!?)
てゆうか ツ ナ 骸 は!!!?(盲点だったな!)←………。

かけばかくほどに綱吉を愛するひとたちの話になっていく……(ガタガタガタ!!)
















































ぼくのなをよんで。









A c a n t h u s












ほろりほろり、なにかあたたかいものが瞼の上から、頬に、額にも。…これはなあに?
つなよしつなよし、つめたくことんことんと何かがふってくる。

(ああ、…そうか、大丈夫大丈夫、きみは大丈夫だからね?)

さらりと額の上に冷たい艶の彼の髪がおちてきた、ちいさな頭がコトンと寄せられている。 つなよし。泣き叫んでいる心がちいさく名前を呼ぶ。冷たくて固い声音が綺麗。いつだって彼は綺麗。 黒髪の艶やかさは烏の濡れ羽よりも清清しいほどに美しくて、その細くて長い前髪の隙間からゆらりと 現れる双眸の漆黒などは苛烈で鮮烈で、心をぎゅっと鷲掴んでしまう程に暴力的な蠱惑さを孕んでいるのだから 恐ろしい。彼は、まだ、……ああ、こんなにも幼い。
綱吉は自分に縋りつく少年の頭を撫でてやりたいと猛烈に思ったが、しかし、同時にそれが到底無理なことだとも 同じ強さと速さでよく知っていた。なんとか声をと思えば、ひゅっと、そしてぜぇえという隙間風の音しか 漏らせない。

「死ぬな、死ぬのなら、ころしてやる…!」


(大丈夫、世界は何も変わらない。君が君として生きていけばいいんだ…、もう、君は世界を見ただろう? 触れれただろう?ねえねえ、もういいんだ、おれが、おれが…、できることはもうないんだ)

























「……ヒバリは、俺に対していつも何か怒ってるみたいで怖かった覚えがある」

パンパン!と皺をのばしながら洗いたてのシャツをほしつつ、今日の天気はーとか今日の晩御飯はー…なんてネタが つきたので仕方なくそんな会話に滑り出してみた。ヒバリは傍らで本を読んでいる。マンションの屋上よりも 窓辺で読む方がいいんじゃないかなぁ…とか思うが、綱吉にだって屋上の空気を吸いたいことがあるし、 今日の風は何処か柔らかくてイイ感じだから、…うん、ヒバリも気分転換したい時だってあるんだ。 ……でも、だからって、読書してるんだから『なにか喋ってよ』はいらないような、うざいよ絶対。

「なに?君と僕が引き合わされた時の話?」
「そ」

ぺらりとページが繰られた。ヒバリは目線を寄越さなかったがその声が綱吉の話に食らいついていた。 目は字を追ってはいるが、耳が言葉の先を待っている。なんとも器用な多才なひとだとヒバリのことを 綱吉は感嘆まじりにいつも思う。家事も何だってこなせる。普通ならこれくらいの少年なんかは 株になんか手を出さないだろう…。いやいや、その前にバケモノ退治なんかとかそんなド暗い場所に居ないような…。 まあ、ヒバリさまですし。ヒバリは家柄からしてこういう血筋らしいと、ポツリと聞いたことがあった。

「出会い頭に殴られた…」
「腹の立つ顔をしていたからね」
「いや!でも!速攻だったじゃないですか!!絶対顔みて、…あ、握手求めたら殴ってきてませんでしたかぁ!!?」
「むかついたんだ」
「でも俺昏倒したんですが!?てゆうか俺じゃなかったら死んでたんじゃあ……??」
「よかったね、しななくて」
「……………やはり、やめましょうこんな話」
「そうだね、読書に集中出来ないし」
「……………………」

ヒバリ様だ。綱吉はふうと溜息を吐いて口を噤むことにした。話せといったり話すなといったり、彼は本当に 気まぐれな性質で横暴で高潔な主君らしくだ。パンパン、と今度はタオルを引っ張り出して皺を伸ばして干す。 ヒバリは猫のようだ。ひっそりと目を細めて自分を見つめていることに綱吉は知らない振りをした。 ……時折、こういう時にこそ、何かとても彼に対して申し訳ない気持ちになることに蓋をしながら。 彼が自分を知っているだなんて嘘の筈なのだからと、苦しい錯覚を脳裏で噛み砕く。ボリボリバキバキ、 黒髪がゆれる。黒髪を知っているのだ綱吉は。黒髪の隙間から現れる闇の宝玉の爛々とした……。

『        』

綱吉はさけんでいた…。(ああ、ちがう。ちがうんだ…、あれは、あれは………。)

「綱吉」

ビクリ、指先がじんじんとした。震えた背中からびっしりと汗が噴いた。世界が暗かった、けれども あかるくて、あかるいのだろうか…、穴の中から覗く景色のようにそしてすべてがのろりととまり、のろりのろり ゆれながらゆれうごく。綱吉はぜえぇ、と隙間風のような呼吸を繰り返した。心臓がぴたりと止まった。 上体は前屈みに折れ曲がり、背中がぶわっと火を噴いた。熱だ。あつい、くるしい、もっと燃えろ。 体がガタガタと震えて冷えて固まりそうなんだ。綱吉はつらかった。

(おれは、わすれてはならないことを覚えてないんだ……!!)

たってなどいられない、こんな、こんな、なんて酷い…、なんて、気の遠くなることだ、 そらは天は誰だみおろしているのは……ッ!!
綱吉の口から滅多に伸びない牙がくわっと伸びた。ぐるぐると喉を鳴らしそうな、獣の風情が全身を覆いつくそうとする、 だがヒバリは何の感慨もない瞳でそんな綱吉を見つめてやれやれと溜息吐いた。冷静だ。 読んでいた本をパタリと閉じる。

「……綱吉、何を混乱しているんだい?羽を生やして飛び立っていこうとも 君の止まるべき枝は見つかることはないんだから」
「…ヒ、バリ…?」
「憐れまないから僕は」

あわれまない。重ねて平淡にいいのけて空をふぅっと仰いだ。呆れるほどに晴天だ。綱吉はピタリと動きを 止めて低く呻いた。かなしいのだろうか…、そのキモチも平淡に。

「君が生きているこそが重要だ」
「…………そう」
「なにを忘れたっていいじゃないか。君が生きることを許す僕がいるんだから」
「うん」

黒髪。綱吉はごろりとコンクリートの上に、ヒバリの間近に寝転んだ。冷えた体が陽の匂いのする熱いざらざらしたもので温まっていく。 見上げた空は無情なほどに高くて、青は冷静の色だと思った。冷静なのに温かいものを零す。 ヒバリは冷たいように見えて温かい生き物。あたたかい、その手が綱吉の髪を撫ぜてそっと両目を覆った。 混乱と慟哭がすぅっと体の奥から抜けていき、涙が。ヒバリはそれをすっと頬をくすぐるように指先で拭った。

「……大丈夫、君はちゃんと覚えている。安心しなよ。君から奪えるものなんて何もないよ、 君はちゃあんと奥底に隠し持っていて取り出し難いだけなんだ、そう君にさえもね」

いきていいよ。ヒバリはもういちどいった。いきて、その後に妙な間をつけながら、いいよ、と。
綱吉は目を瞑った。














ザン、と海鳴りにも似た音をさせて暴風が吹いていた。ガタガタと鉄の扉が揺れ動き、バキ、と音がした。 明日点検しておくかとヒバリは頭の隅で思いつつ点検は綱吉にさせようと決めていた。 このマンションの管理人はヒバリではあるが表向きは綱吉となっているのだから、いや、そうでなくてもさせるのだが。 それにしても夜と昼はなんと奇妙な、ヒバリは今更のことを今更だが感心した。 この屋上の姿は朝とはまるで違う。 闇色の空に星はちいさく瞬き月明かりは藍色へ優しく染め上げているというだけでも同じとは思えないなあ。 不思議。不吉。ヒバリは平淡な色の無表情を少しだけ緩めた。ふっとあたたかい吐息を吐いて、 目の前の漆黒の男を見つめた。闇鴉のような、闇より闇より翳る濃厚な影。これのせいじゃないのと思った。 そして脳裏に昼間のあの綱吉の寂しそうなヘンテコな顔が脳裏に甦る。

「……君もさあ、変な生き物だよね」
「あ?」
「綱吉と似てる」
「侮辱か?」
「大事なのは自分じゃないところがだよ」
「そうか」

男はすっと鉄柵に腰を下ろした。ごうごうと吹く風などに微塵も揺れ動くことなく、 にまりと微笑んだ。元気そうだ。それはヒバリのことではない。 背後に溢れる夜景、高い場所、此処よりも遥かに高い場所から男は降ってきたのだと聞いたことがある。 彼は猫のように機嫌よく目を細めながらするりと天を仰いだ。黒髪が細くぱらぱら風に泳いだ。

「……今回は、なかなかにいい」
「そう?君の嫌いな蛇がいるんだけど」
「あれは今回は害なんざぁ無い」
「邪魔」
「まあな。でも綱吉は気に入っている」
「あっそ」
「今度また殺しやがったら魂を弄ってやるさ」

くくく、と男は無邪気にわらったが其の双眸はシンと静まりかえりその静寂が沈黙が底でくゆる黒い炎を 怒気を存分に思い知らせた。氷の眼差しなのに業火のように烈しい。男は何処か常に相反するものを 身に纏っているようにヒバリには見えた。 どちらも本当の感情でどちらも強くてけれども彼はその狭間で揺れ動くこともなく 時に邪悪に身を委ねてみたり奇妙さに面白がって行動してみたりと男は何とも不思議な行動不思議な 威圧感をもってニヤニヤ笑いながら真っ赤に爛れた道を進んでいく。 まるで世界は彼の為に用意された箱庭で遊び場で、彼は真っ赤な炎で降り立った場所を黒く染め上げていく。 焼け爛れさす。世界は悲鳴に濡れて干乾びて…。

「そんなに綱吉が大事?」

綱吉を心底から愛している。男はヒバリの言葉にやさしくわらった。

「ダンピール、お前も愛してるじゃあないか。幼いお前の激情が俺を呼んだ、だからお前を偏食な あいつの餌と選んだ」

飢えさせるな、男はにっこりと慈愛の笑みを浮かべた。 飢えさせるな。あいつはやさしい。男はニコニコ微笑みながらすっと立ち上がった。月の光が 塞がれた。爛々と見開かれる真っ黒な深淵の瞳が何もかも飲み込みそうな顎を連想させる。 白目の部分が蝋のようだ、つるりと冷たく凍えている、だからこそ闇色の瞳の苛烈さが嫌でも 浮き彫りになる、いいや、黒目が濃艶なる濃厚な黒炎のようだからだろうか。 ヒバリは、ふぅと溜息を吐いてはいはいとおざなりに返事をかえした。 綱吉が同属の血しか受け入れないだの高等な生き物の血しか駄目だの何だの 如何でもいい、ヒバリだって綱吉が飢えているなど御免だ。 だって綱吉は食べ盛りのように食べる。綱吉はヒバリの料理が好きだという、相変わらず。 馬鹿だなあ。もくもくと食べていく綱吉を思い出すと口許に笑みが宿ってくる。 覚えてほしいとは思わないんだ。君が死んだ時の絶望を知らない君、ヒバリは あれから百数年の時を生きた、そしてまったく白紙の綱吉と出逢った。

『…えと、よろしくお願いいたします』

はじめましてだなんて、不覚にも脳天に雷が落ちて目の奥がチカリとした。胸が。……それを怒りというのか 爆発したみたいなカンジでヒバリは即攻撃をしてしまっていた。ああ、恐怖かな。最近では そう思うようになった。恐れを感じると即攻撃に転じる心というものがあるのだ。 ニヤリと訳知り顔でわらう男をヒバリはスッと見上げていた。この男は。
いつか自分もこの男のように傍に居るのが耐え難いと思うようになるのだろうか?

(…いいや、そうはならないかな)

これが彼を生かしたか彼に生かされたかの違いか。ヒバリは綱吉が綱吉であったからもうそれでいいと思った。 生きていてくれるのなら、…ならば、自分を覚えていないことなど許そうと。
忘れてくれていてもいいよ。
(とてもおそろしいことだったけれども。)

男は鉄柵の向こうに落ちていった、ああ、また窓の外から微かに眺めるのかそう思うと彼はせつない生き物だなと 思った、綱吉のように。それとは少し違う色で。












(終)











 アトガキ
なんとも単調。オチもないような気も……(おおおい!!?)
2006/05/03