攻撃するときに響く反撃の甘い予感。(傷つきたいの?そう君はつぶやいた)











サディスティック・マゾヒスト












黒くて大きな背中はドンと威圧感をもってツナの目の前にあった。

「……た、…ただいまヒバリさん」

思わず引く。大きな大人が拗ねた子供みたいに膝を抱えて座っていないで欲しいとか、……いや多分、絶対に 子供みたいに拗ねているから、おおきなおとなってのはあまり大事な意味や威力もまったくないような気がする。 とゆうか紙くずだ。
彼は好き勝手に生きている。彼の持つ基準も羞恥心もひととはだいぶ違うものだし、楽しみも苦しみも 何かが反転している。それでもただ。……ただ、それでも人間であることはこれからまったく変わっていくことはないだろう。

「……綱吉」
「はい!!」

なんて冷たいお声だ。相当に腹を立てていることは確実である。 けれども仕方がない。仕方ないという言葉を彼が嫌っているから今の状態で発してしまったなら 絶対に火に油を注ぐものでしかない。だからツナはきゅっと口を閉じた。ゴクリとのどが鳴って、 ちゃんと言葉はポトンと腹の中におさまった。

「……………」
「…ご、ごはんですか…?」

多分。あってると思われる。ここ最近ずっと忙しくて彼と食事をした記憶がない。 それを彼は確実に怒っているのだろう。構う構わないというものが自分の都合で行えないというものも 含めて多大に。ツナの所有権は自分だけのものだからと豪語することも憚らない彼だから、 本当にこれはすごく怒っていてすごくすごく拗ねまくってるに違いない。
……でも、言っておこう。これでも、こんなんでも昔に比べたらいくらか穏やかになった方なのである。 まだボスなりたてホヤホヤの頃など何度となくヒバリにツナは拉致られた。 その度ごとの騒動といったら………。ああ、血が降っていた…。

「…………」

そんな頃と比べたら我慢強くなっているといえた。しかし消化できないからツナに不満が素直に ぶつかっていく。ツナはそれを何とかすることに毎回苦労している。…の、だが。


「…ヒバリさん」

ツナとて学習能力や彼の扱いを他の誰よりも心得ている意識はあるし実績もある。 彼の欲しいものを持ってるのは自分だろうって思うようにもなってきた。…少しそれが苦しいなぁと 目を細めながらも。
ひとつ、深呼吸。言い慣れない言葉がすらりと出ますように。




「……………あんまりそんな風だと、殺してしまいますよ?」

「!!」


……絶対に。
同じ毛並みの猫耳猫尻尾がついてたら絶対にピンと天に向かってまっすぐ伸びたことだろう。 ビクン、大きくひとつ震えた背中。肩。おそるおそる…、胸を躍らせてゆっくりと彼の首がまわる。
つなよし。
震えそうな唇。子供のようにぼんやりと、けれどもランランと見開かれた双眸。
綱吉。
音もなく紡ぐ。



ツナは。
彼が自分に手を伸ばすとき心の奥底密かで返される刃があることを夢見てしまっているのを知っている。







(終)











 アトガキ
らぶかぷ。めざして。
2005/10/1