「知らない振りなど出来ないのです、結局僕は現実主義者ですから」











どうぞ、どうか、『目隠し』を。












いつか失われるものだったのだコレは。愚かしい程のゆらりとまっすぐに見上げる瞳の素純な煌きが、 空が青いと笑う、本当にそんな当たり前のことで嬉しく笑うその姿の 馬鹿馬鹿しさが一瞬一瞬を降り積もり行く。これは失われる、これは失われるのだ。だが。 そうしてふと思う、愚かしい事とはなんだと、賢しい事とはと。 (永遠を生きるのです。)生きること、生き残る術のことを賢しいと捉えるのならば、 次の生もあるこの魂の賢き姿は愚かしき姿とは一体如何いったものであるのか……。 (物知りだね骸はと彼が…、) 今までの賢き手法すべては一度きりの生だからこその術だったのではと、…賢と愚の違いとは何だ。 優越者だったろうか…。その問いの答えは未だ無い。(ずっと無いのではないだろうか。) 多くを生きれば高等であるのだろう、賢き術が生き抜くことというのなら、では何故だろう、 なぜに。
……劣等な劣悪な部類の人間の言葉にハッとして其の姿を目に焼きつけようと 腐心するのか。(なまえ、こえ、きみの。)目の前に居るのはやがて失われる生き物なのに其れが、 ……ああ、どうしてだ、どうしてだろう、……どうしてでしょう。
今すぐに殺してやりたい程に憎らしかった。


「……掻き乱すモノなど、いらなかった」

ポツリと骸は虚ろな声を絞り出した。いらなかったのですよ。とても細く頼りない声が 綱吉の耳にかさかさと鳴り響いた。まるで死人のような声だ。ずるりと彼の頭が落ちて綱吉の薄い肩に 骸の額が押し付けられる、まるまった背中が細かく震え、綱吉はそぅっと、浮き出た背骨に 指を滑らせて幼子に対するように彼を宥めた。彼はまるで神に縋る狂信者のように綱吉をあいする。
綱吉のどんな声も彼には届かない。

(いつかは失われる者、この人は、……)

綱吉はやさしい。 彼の腕に抱かれると涙はとても臆病になる。目の奥でぐらぐら揺れている。なみなみ流れているというのに 一歩も出ようとしないでそれなのに鼻の奥にひっそり足を伸ばす。 骸が『次』に持っていけるのは記憶だけだ。……涙を零して彼に縋りたかった。 おぼえていよう、おぼえていよう。けれども同時に其れがとても耐え難い記憶になることを。 だから涙ひとつ零せない、これは賢しいことかもしれない。愚かになりたい、そうも。 ああ、だがしかし。骸は目を瞑り、綱吉の肩にぐっと額を寄せて鼻をすすった。 きみは。

(爪痕だけ残していく、完璧な支配者だ……)















(終)











 アトガキ
友人とのカラオケにてノートに殴り書いたもの☆(なにしちゃってんの!!?/笑)
2006/05/04