よく晴れた日だった。
……秋から冬に変わりつつある、朝晩が涼しくなるこの季節。野良猫が段々と丸くなる季節でもある。
近所にあるこの家の塀の上、毎日この時間はここで過ごすと決めている『彼(か彼女)』は今日もそこにいた。


「……」


自分の頭を縮こめた前足の上に置き、できるだけ小さくなって体温を保とうとする姿は愛らしく丸く、閉じた瞼がピクピクと動くさまもまた愛らしい。そっと、驚かさないように彼(彼女)に手を伸ばしてみる。


小刻みに震えてしまう自分の指先に気がついて慌てて引っ込める。唇に触れさせるとひんやりと冷たい。こんな冷たい指で触ったら嫌だろう……。ズボンに掌を擦りつけ、ほんのり体温が戻ったところでもう一度そっと手を伸ばす。


もう少しで、指先が柔らかな灰色の毛に包まれた猫の尻尾に触れる……!!
雲雀恭弥はごくりと唾を飲み込み、ドキドキと高鳴る胸を必死に抑えながら……さらに掌を近づけた。







あずまんがりぼーん。またはヘタれヒバリさんを書いてみようの回。













「にあ゛あ゛―――!!」

もうあと数ミリで指先が触れる、その瞬間。凡そ猫らしくない悲鳴を上げて、猫は塀の内に飛び降りてしまった。


「……」


今日も、触らせてもらえなかった。


柔らかい猫の毛がチクチク刺さるはずだった指先は空中に浮かんだまま。
柔らかい猫の毛を十分スリスリするはずだった指の腹に涼しい秋の風が通る。



「ふう……」



もう、何度目だろう……。ヒバリは僅かに顔を歪ませた。通りがかる同じ中学の生徒は背中からすさまじい負のオーラを立ち上らせるヒバリに怯え足早に通り過ぎる。
誰もが怯えた目で見つめる彼の表情は、背中から感じるものとは真逆のものだと言うのに。


「綱吉……一体いつになったら触らせてくれるんだ……」


綱吉。江戸幕府5代将軍の名でもあるそれは初めて見た時にツナ缶の空き缶を舐めていたからという理由で、猫に勝手にヒバリがつけた名前だ。


「……?ヒバリ?なにしてるんだお前」
「リボーン……?」


腰の辺りから掛けられた声に下を向けば、飛び級で6歳にして中学校へと編入した天才イタリアマフィア中学生、リボーンが佇んでいた。
つんつんと立てられた髪に学ランをきちんと着こなし、身体のサイズに合った特注の学生カバンをぶら下げている。


「……あん?また猫に噛まれたんだろ」


「今日は噛まれてない」


「逃げられたか」


「……」

「図星かよ」


黙り込んでしまったヒバリを尻目にリボーンはステステと中学への道を歩き出す。ヒバリもいつまでも立っているわけにはいかずそれに続いた。
ヒバリが付いて来ているのをちらと確認し、リボーンは面倒くさそうに溜め息をついた。


「……お前も毎日懲りないな。そんな物騒なツラでじりじりにじり寄られたら猫じゃなくても逃げたくなるってもんだ」


「怖がっているからゆっくり近づいてやってるんじゃないか」


「……さらに怖いだろーが。てゆーかな、そんなに気に入ってるなら捕まえて飼い殺せよ。どうせあんな薄汚いの野良猫だろ」


「ああ、そっか」


ぽん、とヒバリは手を打った。その態度にリボーンは軽く頭を抱えた。全く、と頭の中で呟く。


この雲雀恭弥という同級生とやらは物騒で、触れるもの全て殴るくせに変なところで天然だ。
だいたい自分がいるクラスだって、この雲雀だけに留まらず馬鹿ばっかりで、6歳の自分が一番しっかりしているようにも思えてきている……。
獄寺とかいう暴走バカ、山本は体力バカ。俺の周りは全員バカだ……とそこまで考えてリボーンは一つの事実に気がつく。

……結局自分に絡んでくる人間がバカばっかりだという事実。


「まだまともなほうだと最初は思ってたんだがな」
「……何が?」


自分を憐れむような目で見上げてくるリボーンの態度に疑問を覚えつつも、ヒバリは猫捕獲作戦について頭を巡らせ始めていた。











数日後。











「……ヒバリ、それはどうした?」


満身創痍。露わになった腕にも足にも、額にも包帯を巻いて教室に現れたヒバリにリボーンの声が飛ぶ。
何も事情を知らない人物が見るならば『族の抗争に巻き込まれたか!?』ともとられかねないヒバリの様子にリボーンは思わず尋ねてしまっていた。
ろくな事情でない事は、先日のやり取りを思い出せば明らかだが。


「綱吉を捕まえた。で、綱吉に鈴付きの首輪を付けようとしたら散々暴れて。なんとか抑えつけて着けたんだけどこうなった」


「……ほう」


「……で、なぜか今日起きたら綱吉が人間っぽくなっててさ。襲い掛かったら噛み付かれた」


「ほー」


猫が人間っぽくなる。
リボーンの頭の中では世間一般にいわれる『ネコミミ少女』なるもののイメージが描かれていたが……どうしても、とヒバリに言われて見に行った先でそのイメージを叩き壊される事になる。


「……男じゃねーかっ!!これを襲ったのか!お前は!?」
「勿論だよ。可愛いじゃない」
「にゃああ〜」


頭を抱えてヒバリに突っ込みを入れるリボーンと、真顔で『可愛い』を連呼するヒバリ。その足元で鳴く綱吉の首につけられた鈴がちりりーん、と3人(?)に呆れるように乾いた音を立てた。


何はともあれ、ヒバリはこうして猫の綱吉と暮らす事になる。
もう毎日塀の上にいるかいないかを確認しなくてもよくなり、触れるか触れないか……逃げられるか逃げられないかの緊張を味合わなくてもよくなったのだからヒバリは幸せなのだった。




















からすまるより。
実は結構前に頂いていたのにこんなアップ遅くなってゴメンよ!!愛してるからねvv(わあ容易い愛だ!!)
この頃のかけっちゃんはヒバリ受な人でした(爆)でも私がヒバツナヒバツナいってるもんで ヒバツナくれた!!やったぁ!!!友情パワーだ!!(ぶっ!!) それにしても。普通は受がにゃんこ化してるなら『ツナかわいいーvvv』とか絶叫してる筈なのに、 ツナさん凶暴な上に可愛いのはヒバリさんの方だよ!!!!(爆笑) なんだこのめちゃくちゃ可愛いイキモノは!!!!い、いとおしすぎる…!!(※私はヒバリ様ファンですよ?) ありがとう、ありがとう!!ありがとうございますかけっちゃん!!!