お前は残酷さを知らないのか?





そういった男こそが残酷な所業なんて知らないように思えた。いや、それは嘘なのだけれども、 彼はそういった衝動を抑えきれないような行動をするものだから彼の真実をもみ消されてしまいがちになる。 本当は固い意志とか信念を抱き続ける男。奥深いところがいつも冷たく輝き、刹那の感情に揺れない。 血飛沫に目が眩まない。敵を屠ることが好きだ。惨殺をする。虐殺はしない。 残酷さを知ってその威力を効力を知って方法を知っている。残酷なことを平気で淡々とする。 残酷なことを知っている。 知っていてやっているのに気性の荒さゆえに見せるから何処か狡猾でやさしいじゃあないかとふっと思った。 ずるい。


「知らない。そんなもの何処にもないんだ」


トン、と。瓦礫の上から飛び降りる。男も続いた。ないよ。顔も見ずに素っ気ない声で零したそれをどう受け取ったのか。 それきりスクアーロは黙り込んだ。 ぼうっとグローブと額から炎を噴出させた綱吉にきっと再度問うこともないのだろう。
残酷さか、残酷さなんて…。藍色の空をちらりと見上げた双眸は赤く金色に煌いた。


「……残酷なことは、傷つける為にあることだから」


ぼっ、とまた炎が強く噴き出され綱吉を中心とした赤く輝く渦が沸き起こる。炎の円舞だ。 綱吉の瞳は気高く無機質な色で研ぎ澄まされていく…。





「何物にも傷つくことが出来なくなった俺に理解できるわけがないよ」










骸。























『僕を忘れないでください…ッ!!どうか、どうかどうか、どうか僕を決して!!』
























殺せば良いのだ。



『いっそ憎めば良かったんだよ、俺は、俺はやはりこういった欠けていくばかりのひとだったのだから』





お前の輪廻に付き合えても決して救いなど与えてやれない。幾度も幾度も繰り返し忘れていくよ。 お前を駄目にしていく。……ほんとうに、愛さなければよかったね。 愛さえ無ければ狂しみなどなかったのに。















【 05. 優しさと寂しさと温かさを教えてくれた、最愛の貴方へ 】
                                        title by 【 capriccio 】
>>Asphodel(アスフォデル)