『叶うことのない願いは』
     title by 【 ラストレターの燃えた日 】











【 欠 け た そ こ で カ ナ リ ヤ が 歌 う だ け 】


朝目覚める夢をみた、そう感じた。
不思議な感覚である、自分は確かに眠っていたのか起きていたのかなどまったく定かにならず、 まるで空間の裂け目とやらに片足をつっこんでずるりと丸ごと身体も意識も非現実的空間の顎の中に ばっくり飲み込まれていたようで…。ちからなくわらえてくる。 眼の前にまっしろな自分の片手があった。 まっすぐに天へと伸ばされた腕は滑稽なまでに清廉ないろでたっているのだから。 (おさなごのようだね。) 指先がひりついた。 ガクガクとぶれていく腕をそれでも下ろす気になれずにいるのだから更に始末に負えない。 夢の残り香というものはなんとも残酷だ。

(疾うに気付いている、気付くまでもない、そう、もう知っているさ、知り過ぎているよ…。)

この振り上げられた、伸ばした手の先をもう、…自分はうしなっているということを。
(二度と、だ。)
あとはもう降ろすだけ。エンドロールを。幕引きを。
エンドロールを…。

「過去に仮定を求めるなんてそんなの無意味なのに、どうして繰り返すのだろう?」
(おれは愚かであっても惨めになってはならないのに?)

ほこりたかく。
振り返りながら笑うひとがいた、その度に振り撒かれる光が好きだった。(…二度と、もう) 自分を見つめる瞳がひたりと静かに綺麗にゆるまり温かく見つめてくれる、愛しいと、 唇にこそもらさなかったけれども、触れた気配すべてから浸透してきた。
のばした手。凛とした空気がゆるゆるとそこから溶けてふれてくれという。 シャツをつかむと手を重ねられた。(見上げた先の貴方はいつだって優しく…、俺は、しんじていたんだ盲目なまでにあなただけは、と… 光のような貴方だから…、だから俺は、)
迷わないようにそっとつかんだ。あたたかい手から奇妙な切なさが湧き上がる。
(俺は貴方になんといえばいいのかもうわからないんだ…、もう、二度と、と思考を閉じるしかないのか…?)

『誇り高く…、』

そっとのばした手を降ろす。暁いろのあの人はもういない。(戻らない、何もかも。目を閉じる。)
残ったのは事実だけ。ころしたこと、ころされたこと。隣にねむるひとがいなくて朝おきれない。






【 未 来 永 劫 そ の ま ま で 】


うしなわれるくらいなら最初からいらない。おさない子供の首に視線を集中させて想う。
うしなわれるくらいならば、指先がガクガクと奮えた。じりじりと、うばわれないようにと意味を塗り替えていく。
疑うことを知らない純粋さ、無邪気な、真摯な瞳がまるく幸せそうに微笑う。 はなのように。ただただ自分の為だけに向けられる真っ白な穢れなき笑顔は。いつかうしなわれるのだ。
それが自分の傍であるのか、また別の遠い場所であるのか、何処であろうと、確信がひしひしと心臓を締め付けていく。
悲鳴をもらせばいいのだろうか、垂れた頭にちいさな手がぐるりとまわった。 抱き締めてくるちいさな身体を抱き締め返せばあたたかく無知としかいいようのない声があっけらかんと告げる。 あたたかく、ていねいに。ていねいに、たいせつに。いとしいという意味も知らずに実践する子供がおそろしい…。

「……そばにいていい?」

なかないでといわない。決して。子供は兄を盲目なまで信じ弟はきつく兄を所有する。
そのままで、このままで、ねがう永遠はいつでも一瞬だというのに。 苦く祈りながらわらう、滑稽だと幸せに無様だと。
絞め殺せたらいいのに。失ってばかりだ覚悟も今この瞬間に。






【 余 す こ と な く 飲 み 干 し て 】


あいしてる。
そう呟くから伸ばした手でその口をふさぐ。もう一度、そうののしるというのなら全てくちづけでふさぐよ。
いきをとめて、もう、あふれてしまうの、だから…。

「泣いている、の…、か?」

あなたの命をすすることで、もう…。
(また、あいしてる、そういうのですね、…ああ、ああ、…、誰にささぐのそれは、かなわない、 そう、かなわない、どれだけでもたらないんだよ、でも、…そうだね、おれは、おれは)

項垂れた頭にふれる手はもはや狂気の沙汰だ。






【 鏡 の な か の 君 を 愛 し た 】


誰にも知られないように。夜をしずかに歩いた。
あの背中を、見つめて焦がれて必死に追いかけていた足跡をひとつひとつ見つけながら苦笑。
彼はなにひとつくれなかったのだと思い知った今では其の何たる幸せなことかと涙をほろり。
あいしていた。
あいしているの、いまも。
ねえ、いまも。
いまも、あなたは。
本心をいつだって見せない、それは気付いていたけれど、まさか、本心なんてものが疾うに失われていただなんて まったくもって酷い話。
目的などない。
この先も持つことなどないと雄弁に語る静かな眼差しはきつくまっすぐに天へと伸ばされていく、それこそ果てなく。
口からの出任せばかり、口から感情を誕生させ、心を躍動させない、めぐらせない。停止した。

「わたしが大事だと、平気でいうのは、…本当にそうだからなのね、 大事なだけで愛してくれてはいなくって、ただ本当に必要な存在なだけなんだ…」


闇の中ぽつりと背中を向けるあなたを見つける、 言葉は呆気なく肯定されて私は崩れ落ちるのです、 せめて貴方と同じ闇であれば随分救われることでしょうが、 あなたは背中ばかりで所在はつかめないのです、 だって本当にアナタはどこにもいないのですから…。 さみしい。愛しさ募るからかなしい。すがってもいいよとあなたはいうの。





【 人 だ っ た 頃 、 】


幸せだったんだ。彼はぽつりとつぶやいた。






【 点 滅 は 重 な ら な い か ら 】


彼の望みも俺の望みも重ならない、何故なら俺に望みなんてなかったのだから。
ただ
あいされていた。
あいされていた。
























 アトガキ
11/26に某所に殴り書きしたものを少しだけ加筆したりしたものー。
ちなみに設定はツナDでツナ髑髏でザンザスはツナのおにいちゃんという設定!!(言われなきゃわからんよ!!)
2006/12/30