Wilder than blue heaven
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綱吉はこれでも一応のところは偉大なる生徒会長さまを守るナイト的役割の風紀委員長殿なのである。 誇れる腕っぷしも根性もなんもなんもないのにねー と大声で自棄になったように泣き笑ったさ!綱吉はもうその時に諦めの涙も零した。だからもう 骸に反論することもやめた。(けど今もなんで俺なんか任命したのさと理由をしつこく聞いておるのだが…、 しかしあちらも本当に頑固なもので絶対に教えてようとはしない。ただ適材なんですーだからお願いなんですーとか ふざけるばかりでまったく馬鹿にしてる!でも『貴方に僕を守って頂きたいのですだって貴方は 僕の唯一尊敬して厚い信頼を寄せてる方なんですから!』とか言われるよりはマシなので…、あ、…うん、そんな 言い訳をいわれるよりもまだ現状の方がマシかもなーと遠い目になったりもするのでした。) ……それに、守るべき生徒会長さまがここらで最大なる悪名とか持ってたりしたら、(あと腕っぷしも 悪知恵もなんもかんも搭載で)……あれー?風紀委員長っていらなくありませんかねー? 綱吉は遠くの空を眺めながら思い至る。カラスがアホカーと鳴いております。ああ、これはこれは! なんとも楽なご職業デスカ!いえ!そこが問題じゃないのですが!綱吉はぶるると首を振った。 いかんいかん、いけませんよ!

「俺は悪党の配下でも仲間でもないんだぁああーーーーーー!!!!」

注**綱吉は骸の幼なじみであることは有名であります。
ハァ、ハァ…、と力の限り絶叫し終えた綱吉を奇妙奇妙しいものを見つめるが如くにざわざわと 活気付いていた生徒たちがシンとなりながらわたわた足早に通り過ぎていく。 綱吉は一途だ。不器用なまでに一途スギテ……、考えことに没頭し始めると周りが まったく見えないのでありまして……、ああ、現在ここ黒曜中二階の廊下、一年生教室の立ち並ぶ、この廊下。 時刻は放課後時。にぎわい…。ガクリと項垂れ、ガタガタぶつぶつと低く唱えている綱吉が 衆人環視のど真ん中で窓の向こうに叫んでしまったよーとかなんとかに気付くのはポジティブシンキングに 開き直る20秒後のことでした。そしてまた絶叫。……悪循環。 そっと教室の扉から顔半分だけ出した千種は一部始終を見ていた。







「俺は、日陰でもいいから地味に暮らしたいのです…」

うろうろうろ〜と虚ろな眼差しで現在綱吉は隣町に足を踏み込んでいた。 千種にポンと肩を叩かれて現実とかに戻ってみたりして、そして、先行ってるからな?という彼の 背中を眺めていたら突然携帯にメールが届いたからだ。パカっと二つ折りの携帯を開いてみれば、 ……ええと、あーあ、なんて溜息が渋面をこれでもか!ってくらい作った綱吉の口から漏れ出た。 あのめったくそ顔のよろしい外人先生からの呼び出しである。 彼は今日なんかの会議で並盛にいくーとか言ってて、じゃあ絶対にタクシーで行ってくださいね! 絶対にですよ!?あなた絶対に迷うんですから徒歩なんてもっての他ですから!!と必死に 必死にイロイロと(あはははー大丈夫だってーとか笑うコンニャロウに拳を見回してやりてーとか思ったがそれを グッとこらえて綱吉は真剣な顔でもって)釘を刺しておいたのだ。
……あのー、それなのにー?

『応接室にいるから迎えにきてくれなさい』

あんたそんな飄々と。
わけわからん日本語もやめなさい!綱吉は、ああもうまぁあったくー!と飛び跳ねまくってる自分の髪を ぐしゃぐしゃと掻き回した。めんどい。でも彼はかなりイイ人なのである。そして綱吉の父性的なものを 妙につんつんと愛嬌たっぷりの困り笑顔でつっついてくるのだ。……み、みはなせねぇー!!

『ツナー!お、おこってるか??えへら、あはははは!すまんなぁー!!』
「……………………………………。…あ、うん…。うん?…ぅん、ほっとけないなぁ」

目を眇め遠くを眺めるような哀愁たっぷり塗られた瞳で綱吉はグッと携帯を握り締めた。 年がら年中性質悪い骸と付き合ってるとわかる、この人は性格良質でトラブル体質で 周りに愛されることを約束されてて、そして周りを愛していて、……本当は自分のこういうドジっこ体質を 一番すまないと思っているのだろうなあと。…でも、どうにも彼のあっけらかんとした笑顔は 綱吉に遠い目をさせる。

「……もっとさ、ちゃんと教師らしい格好しなさいっていいましたよね俺?」

はぁーーと漏れ出る溜息は深く暗い。カクン、と項垂れ思わず顔を手で覆ってしまう。あのひと徹底的に抜けてるわ楽観的過ぎて困るんだ。 だから尚更ほっとけないのだろう、もう呆れというか悟りというか 真っ暗なアルカイックスマイルを浮かべつつ綱吉はとぼとぼと並盛中への徒歩25分の道程を歩んだ。 もーやだぁー。でも放っておけないしぃ!ぱっかぱっかと携帯をあけたりしめたりしながら、…やっぱり帰ろうかなあと か思ったりもするが足は止まらない。ずるずると進んでいく。綱吉はお人好しですねえと骸がわらう顔が脳裏に浮かぶ。 もう引き返すのが面倒だし後味悪いんだよ…、とか力なく綱吉は反論した。 骸はやはり貴方はねとかわらう。別に嘲っているわけじゃなくって。悪いクセだと責めているような誉めているような…。

(……あ、そういえば)

なんで俺脳裏で骸と会話してんだろ?みたいなことはひとまず置いといて (正確にいえば『骸がこれ知ったらなあ…』というシミューレーションなわけだが)、 綱吉は携帯を持ち直して、そうだったそうだった生徒会の欠席連絡しないとなーというわけで 『今日は急用出来たから先帰る。』とぽちぽち骸にメールを打ち始めた。……はあ。憂鬱だ。

「……と、ゆうか、…俺は明日学校に行けるのかな?」

ゴクリと綱吉の喉が恐怖の感情をともなって鳴る。並盛中。『黒曜中の六道骸』と肩を並べる程の 恐怖が存在するという学校。だからいったのに。その言葉がグルグルとまわる、詮無きことと 充分わかりつつもだが、しかししかし…、現実をどうやったって塗り返せないのに。

(不法侵入者として捕まったんだろうなぁ…、風紀委員に)

ダシに使われてる。スキを作ったのだ。 彼が黒曜中の英語教師ということはあちらもちゃんと解っていても知らぬふりで教師らしくないと いちゃもんつけて、そして、黒曜中のものを…。『骸』を。

「……おまえさぁー、やんちゃもいいけど迷惑かからないとこでお願いしますよ」

はじけたい年頃なんですよ。春風のような美しい微笑みで彼は語った。知るか。



「雲雀恭弥か……」


並盛の風紀委員長。並盛の王者。恐怖。冷酷無比。骸の天敵。
パチン、と送信し終えた携帯を閉じて綱吉はポケットにねじこんだ。ディーノ先生の能天気さが彼の気に障ってないといいなあ…!!
























 アトガキ
D野先生は英語教師なんですよ。
2006/05/28