「お前だけは美しく死ね」

ひとときとして瞬きせず。バサバサと外套を大鴉のはばたきのように風に広げた 姿で彼はまっすぐに宝石のように煌めく瞳でうたった。…歌?歌ではない。だが 奇妙なほどに澄んだ旋律のように骸の耳には届いたからなんとも不思議なことで 。決して歌などという綺麗なものでも感情が込められたものでもないというのに …。奇妙。奇異だ。嫌な予感が悪寒とともに背中をずるりと頭の天辺まで這って いった。

「……殺されるな、ってことだよ。お前は老いさばらえ、皺とシミだらけで枯れ 枝みたいな手足になり、静かに寝台の上で涙ひとつぶくらい零してくれる人を傍 に置いて死ぬといいよ、そして土の中でどろどろに溶けるんだ。それはグロテス クな様だが、俺はそれが美しいと思うし考えるだけで楽しくて笑えてくるんだが なあ…」

幸せになれと遠回りにいわれていたのかもしれない。切り離すよと彼は雄弁に語 る。風は一層強く吹いて飛ばされそうになる…。ああ。これがこれこそが、…こ れこそが!不幸の極致であり絶望と絶命の景色だというのに彼は相変わらず骸の 背後に春を思い描く顔をして微笑うのだ。











(終)











 アトガキ
エロちゃんに携帯でおくりつけた初代ものー。うちの初代霧の名前は骸です。
『拾ったとき死体みたいだったし、骸とつけとけばもう死なない気しない?もう死んでるから!』
とかゆって初代さま笑いながら名付けちゃったんだぜ!!!?(えええええーー?)
2007/12/16