おやくそくごと
しんじなくていいよ。 かつては力強くまた必死な懸命さと激情で己を信じろと大きく吠えた口とは思えない程に無邪気な響きがそこから紡がれていた。 なんとも呆気ないものだ、びゅうびゅう吹く風の先に視線を彷徨わせながらサスケは思う。 ナルトの金色の髪がばさりと風に舞い、その青目にふっと影が宿っても決してひとときとして煌きも真摯さも 何もかもが失われることなどない。まるで何かの呪いか。清い眼差しは相変わらずまっすぐにサスケへと向けられた。 「……そうかよ」 サスケは呆気にとられた、しかし表情は まったく一ミリとして動くこともなくて、ふっ、と息を吐いた瞬間にその言葉を受け入れてしまっていた。 冷たくもなんともない声が応えを返す。そんなこといいださなくてもいいんだよウスラトンカチ。 サスケはナルトのかなしみが好きだ。未だ少年の面差しを宿す彼は相変わらずわらったまま、 ニコニコと小さい頃からの親友を無邪気に見つめている。 「俺はお前のことなんざあ一度として信じたことなんかねーよ」 このドベが。サスケは溜息をひとつ吐いた。ナルトも苦笑う。お互い俯き加減に後ろ頭をかいていた。このドベが。 ちいさな距離がお互いの間にゆらゆらゆれている。ウスラトンカチめ。 風は強くてそっと呟く言葉はたちまちかき消されてしまった。 澱みない青空を真っ白な雲が素早く流れていく。 『おれの愛情はもうお前だけにくばれないんだって…』 なにをとはきかないサスケにナルトはほんの少しだけさびしくなって、ほんのちょっとだけ安堵した。 サスケは知っている。告げてよかったのだ、好きだって。 「……しんじてねえよ」 『火影』とあやまちを侵すことが出来るほどにサスケはナルトのさびしさを愛していないわけがないのだから。 |