『わたしはあなたの味方です。』
晴れ渡る空というのは絶好の旅立ち日和だ。青く澄んだ色だけが圧倒的にひろくとても大きく何処までもあった。 雲ひとつない。迷いひとつない。ナルトはいつものように弾ける笑顔でカカシを無邪気な瞳で見上げている。 「元気でいってらっしゃい」 ちいさな頭をてのひらいっぱいで撫でるとナルトは嬉しそうに目を細めて子犬のようにわらった。 胸の奥に暗い穴がぽっかり開いているのになあ。カカシの方がこの笑顔にどこか救われる。ダメな大人だね。 ナルトの方がさびしくてつらいのに。カカシは全然力になれなかった。それどころか良かれと思ってのことで与えた 力がナルトをいっぱい傷つけてしまったし、ようやく形になってきたやわらかな絆なんか見事にずたずたにしてしまった。 (読み違えちゃったのかなあ俺) あの少年はナルトを命賭けで守ったのに。ナルトを生かしたのに。 ……闇色じゃあ、もうそんなんじゃあないよなんて勘違いしたのだろうね。つらいね、ナルト。 つらいことばっかりだね、ナルト。カカシはニコリと微笑むとすっと膝をついて、その小さな身体を 自らの腕の中へとゆるゆる抱え込んだ。ひなたの匂いがする。泣いてもいいよと心の中でねがう。 細くなった身体がとても愛しくて慈しみたくて、…ああ、このまま、なんて。遠くどっかいって たった二人っきりでいたくなる。 「……先生、おれ」 「ん?」 すっぽりと腕の中に囲われ、カカシの喉元あたりからナルトの声がちいさく響いてくる。 もう明日にはきけなくなる声。明日から旅たつ。この手に戻してくれると約束してくれたけれども、やっぱり やめとけばよかったかなと後悔がどんどん湧き出てくる。ナルト。そんなちいさい身体でどうするの。怖いよ、ほんと。 ……でも、それくらい小さければこの無駄にでかい図体で覆えてしまうからいいのかもしれない。 命ひとつで守れそうだ。 「よわいんだ」 「しってる」 「よわいから…、おれ…」 「わかってますよ」 本当に弱ければいいのに。 そしたら懸命に健気なまでに上を向こうとしないでのうのうとカカシの腕の中にずっと隠れていてくれた。 よわければいいのに。 もっともっとよわければよかったなあ。 よわければ、きっとそうすれば。 (絶望しても逃げ出さないお前は、本当に強い子だから困る) 誰もお前の輝きを知らずにいれたのに。こんな苦しみも愛も憎しみも切なさも知らずにいれただろう。 すきだよ。ばけものでいいじゃない。もっと凄いばけものでもいいよ。 そうだったらいいのに。 いいのにな…。 「強くなってらっしゃいな。俺はずっとずっとナルトの味方だから」 さらいたいと、心の奥底からいつだって思う。 いつだって。けれどもその度にカカシはナルトの泣きそうな声によわってしまうから。 ナルトのちいさな両手はカカシの背にしがみついて震えていた。 「……なるってばよ!」 |