集合墓地のヴァンパネラ

 どんっ、と、突き飛ばされてたたらを踏んだ。
 引っ立てられたような気分だ。
「ここでずっと二人きりでしたね」
 後ろ手に扉を閉めて、骸。その口調に不穏なものを覚えた。六道骸の真意はわからない。オレを殺す気か。
「骸。オレよりずっと高位な吸血鬼なのに、オレに使役されてたこと、怒ってるのか」
 声が震える。彼の逆鱗に触れたというなら、――どうしよう。勝てる気もしないし、逃げられる気もしない。骸は小さく首を振った。自らの首筋を撫でる。
 先ほどから、そうしてオレが付けた傷口を探る。その仕草にゾッとしたものを覚えて後退りした。
 それに気がついたんだろう。骸がくすりとする。
「ちょっと腹は立ちますね。人が正気を無くしている間に何てことをしてくれたんですか。しかも、君はそれをわかっていない」
「オレは! 弱いし偏食だし――、自慢できるようなこともない――、けどっ。死にたくはないぞっ」
 腕が伸びてくる。右手を庇って祭壇まで後退した。骸はくすくすしながら物憂げに添乗のステンドグラスへと視線を流す。本当に、それだけで、特別なことはしていないよう見える。
 だのに左手を掴まれていた。実力の差とは、こういうことか。
「どうしてこの教会に僕を置いたんですか?」
「?!」
「答えなさい」
 襟首を掴まれる。
「に、……人間に見捨てられたんなら神の救いが欲しいだろうと思って」
「吸血鬼は神を信じないでしょう?!」
「人間は信じるって聞いた」
「だからシモベをここに? 君は吸血鬼失格ですよ。神を容認するなんて……同族として軽蔑に値する」
「だ、だから、オレは……そういうのが苦手で……」
 ごにょごにょと呟いていると、次第に気が付いた。骸との距離が近い。押される間に、背後には古びた長イスがあった。ぶつかる。
「教会が嫌いだ……。聖書がなくば復活できないだなんて、なんて……馬鹿にしている」
「骸。何? 謝るから――、許して」
 下手をすれば殺される。自然と声が震える。
 ぶちっか、と、骸が無造作にシャツの襟口を千切った。問答無用で顔を潜りこませてくる――何をするつもりか、悟る前に絶叫が迸った。
「ひぎゃああああっっ?!!」
 牙が。刺さった。全身を巡る血管全てが沸騰したような激痛だった。指先、足先までが引き攣って動けなくなる。背中に回り、抱いてくる骸の腕が冷たく感じる。氷のように。そう感じるほど全身が熱い。
「ひっ、あっ、あああああ……っっ」
 がくがくと顎が震える。沸騰した血液が、首筋の一転から吸い上げられる。ずるずると動く異常な感覚だった。気を失いそうだった。 
 ――頭の中で花火でも爆発したような、衝撃。それを最後にして体がぐったりとした。牙が引き抜かれた。
 長椅子に座り込む。オレを見下ろす視線が冷たい。
「僕の血を飲んだ。これでお互い様でしょう?」
「いっ……、痛い。痛い……!」
 生理的に溢れてきた涙で口角が汚れる。骸は気にかけないままオレの片足を掴み、ぐいっと体を引っくり返した。
 もう片足も掴まれると、骸に向けて両足を開く格好だ。
 ギクリとして、言葉を失う。骸はオレの反応を待っていた。
「この前までここにいた僕は、」
 沈黙が続いて、先に焦れたのは骸だ。開いた股の内側に、ぐいぐいと自らの腰を押し付けてくる。突き上げるような動きをされて、ますます体が動かなくなった。
「本能で動いていた。率直な感情とか、そうしたものを分担していた部分です」
 熱の硬さを知らせるように腰を擦り付けてくる。――悲鳴をあげたら思うツボなんだろう、が、耐えがたい!
「やめろ――っっ!! やめてっ。いやだ!」
「殺されるのより?」
「っ?!」
 喉まで硬直する。
 骸は昏い笑みで口角を彩っていた。
「わからないんですか」やや間をおいて、付け足す。
「僕はそういうことを言える口は持っていませんから――。わかってもらう、しか、ないですね」
 スラックスの生地を掴む。脱がせるようなことはしなかった。無遠慮にツメをたてて破り捨てていく。
 びりびりぃ! と、廃教会に木魂する。
「あ、だ……、オレ、そんなの経験ない……」
 情けないとはわかってる。でも、怖くて涙が出てきた。明日のご飯とかを考えてばかりで、そもそも、同種の女性ともセックスしたことないのに。
「それは素晴らしい」
 ビッ。と、下着を破り捨てて、骸。
 下肢だけを晒された格好だ。命の危機と貞操の危機が同時にやってくるとは思いもよらなかった。それも自分がシモベにしたはずの骸によって。
「あ、あ……」
「萎えてる」
「あ、当たり前っ……」
 くすりとして、骸が折れていない左手を取る。そうして自らの股間に触らせた。
「や、やだってば……!」
「硬いでしょう。何で硬いか、わかりますか? 期待してるからです」触らせた手を、今度はオレ自身のペニスへと導く。ぺろ、と、下唇を舐めてみせる。骸の両眼は嗜虐に酔っていた。こっちが紛れもなく六道骸の本性なのか。
「君はこれから気持ち良くなる。期待しなさい。まずは自分で起たせましょうね。それが、ひとつ……」
 妖しげな響きを持った言葉だ。――響き。先ほどの吸血を思い出した。同じ吸血鬼とはいえ、骸がその気になれば恐らく――。
「い、いやだって。ならない。お前とヤったって気持ち良くなんかならない!」
「なる。なぜなら君が僕のペットになるから」
「……?! 骸、やっぱり、さっきの吸血――に、お前、服従の――!」
 クッ。愉悦に喉を鳴らして骸が目を細める。その唇がことさらゆっくりと開かれる。中から、赤味を帯びた舌先が覗く。
 夢中で叫んでいた。ありったけの力をこめる。吸血鬼として、というよりも、ここで屈服したらオレの全部がダメになる予感がした。
「な、ならないっ。ならないの!!」
「なる」
「ならないいっっ!」
「なりますよ。例えば、これが気持ちいい」
「えっ?!」唐突だった。首が伸びてきて、吸血によって穿たれた傷痕に舌を這わせる。れろ、と、舐るようにされて鳥肌が立った。
「ひっ……」
 舌が離れると全身が脱力する。
 我が意を得たり、とばかりに骸がくすくすとする。オレの手と、自分の手を重ねたままで扱く動きを始めた。
「ぁっ、あ、あっ」危ない。危険だ。呑まれる。
「そんなに眉間を皺寄せて……。トドメが欲しいんですか?」
「あぐうっ!」
 まだ渇いている。そのままで性器を弄られると痛みが伴った。骸が親指を使って亀頭をぐいぐいと押し捏ねる。
「どうしましょうか。自分が変態だってわかるようなのがいいですか? 僕がこういうタチだっていうのはわかっていただけたでしょうね?」
「あ、うっ。痛いっ。痛いのっ!」
 涙が止まらなかった。既に半分、骸に取られている。骸の手が離れてもオレの左手は自分を扱くことをやめていない。支配されることが、これほど体内的に作用するとは知らなかった。
「潤滑にしたいんならイケばいいでしょう」
「む、むりっ。気持ちよくなるのなんか無理!」
 ほう。喉で唸って、骸が具合を確かめるようにオレの両眼を覗き込む。泣き腫らして赤くなった目があるはず……だ。
「気持ちよくなります」
 本気だ。本気で服従を誘ってきてる。
「堪らなくなる。すぐに」にや、と、笑って骸が頬に手を添える。長椅子に中途半端に座ったまま両足を開き、片手でペニスを扱いたまま慰められるのは屈辱的なことだった。頭がくらくらする。呼吸が荒くなってくる。
 頬をすりすりとされて、自然と、骸の手に頬を押し付けていた。
「痛い……っ、やめ、て。死にたくないけど、これも、やだぁ……」
「……なら、泣き叫びなさい」
「なっ……。骸! 骸! やめてっ。やめろよっ!」
 骸が長椅子に膝をついた。目の前に彼のペニスがある。深く考える前に、両頬を鷲掴みにされて引き寄せられた。
「むぐうっ?!」
「苦しくしますよ。叫べるなら叫びなさい」
 酷く興奮した声だ。骸のこんな声は初めて聞く。
「あ、あぶぅっ?! うぢゅうううっ! んぶっ、んんぐうっ!!」
「くっ。口が小さいんじゃありません? すぐに喉の奥に当たる……」
「ぐむううううっっ! うじゅうううっっ」
 女の人に叩き込むみたいな腰使いで口を使われてる。その現実がショックで、頭が真っ白になる。呼吸がせき止められて全身がびくびくと痙攣した。
「ツナ? 苦しいですか?」
 折られた右手が断続的に痙攣してる。左手の方はこんな状況でも淫事に没頭していて現実に帰ってきてくれない。
「あむううっ!! っっっ!!」
 喉の奥をついたまま骸は動きを止めていた。にやにやとしてくる。
「このまま出しても楽しいでしょうが……」
「むうううっっ! ううううっっ――!」
 後頭部を掴まれる。ずちゃずちゃっと大きく出し入れした末の吐精。骸は自身を口から引き抜きかけたところで吐き出した。
 舌の上にどばどばと苦いものが広がる。
「うっえ」即座に吐こうとした。だが、口から引き抜いた骸が、後ろの髪の毛を掴むと――強引に頭を引き寄せる。
「うえっ……、あ……?」
 ばたばたと吐き出した。その下にあったのは自分のペニスだった。
「…………」
 ぐらぐらとする。足元も頭の中も何もかも、だ。自分が、徹底的に嬲り尽くされてるような気がした。
 髪を離されて、長椅子に寄りかかる。
 ぜえぜえと呼吸を貪っている内に骸がペニスに白濁を塗りつけた。何度も鈴口に練りこめる仕草をする。
「ひっ……、う……」
 腰がガクガクとした。もはや完全に呑まれている。
「痛くないでしょう……?」
 親切そうな笑顔だ。じりじり、腰から沸いてくる悦楽に思考が焼ききれそうになる。限界に差し掛かってる。オレじゃ、所詮、この程度……、で。
「む、くろ」
「何ですか、ツナ」
「だ。きら……。おまえ、むかつ、く。大嫌いだ。死んじまえ……」
「……殺しますよ。そういうことを言うと」
「!」口を引き結ぶ。けれど。言わなければ、どうにかなりそうなコトだってある。
「自分で自分のチンコ扱きながら言うにしちゃあ、お粗末な台詞じゃないですか?」
 骸は完全に気分を害したようだった。
「どうしてわからないんですか?! 僕はヒントだってたくさんあげてる――、君にそんなことを言われるなんて思いもしなかった!」
 それなら、お前はただの馬鹿だ。胸中だけで言ったつもりだが、意思は視線から伝わったらしい。骸は問答無用で右頬を殴りつけてきた。
「ぐっ!」
 長椅子から落ちる。
「あああ、トドメを刺してあげましょうね」
 投げやりな調子で骸も身を起こす。すい、と、軽く身を正すと祭壇を振り仰いだ。片腕を持ち上げると、1羽のコウモリが肌の内側から湧きあがってくる。
 コウモリは聖像の頭上で輝いていた十字架を持ってきた。――ものすごくイヤな予感がした。
「何でこんなことするんだよ! 最低最低最低最低死ねよおまえ!」
「それはどうも」身もフタもない。その一言だけで終えて骸が十字架をペニスにすり合わせてきた。
「ひっぎぃ……!!!」
 びりびりした痛みが脳天を刺した。
 そこにぶちまけた精液を掬うのが目的だったようだ。先端にまぶし終えるとオレの両膝を立たせる。自分の足と絡めて固定させると、後腔に指を突き立てた。
 形容のしようもない異物感だった。背中が仰け反る。意味のない悲鳴をあげたが骸は取り合わなかった。
「やめろっ。死ぬっ。死んじゃう!!」
 必死だった。骸を罵倒しても――こんな馬鹿みたいな方法で殺されるなんて耐え難い!
「お前みたいな高位なヤツはいいよ! 十字架もにんにくも効かないしっ! で、ででもオレみたいなのには……っっ、そ、そんなことしたらぁああっ……!!」
 呂律が回らなくなる。がくがくと酷く震えていた。
「気持ちいい。でしょう?」
 後腔に差し込んだ二本指とは別に、ペニスの先端をぐちぐちと擦られる。亀頭の斜面に沿って、親指を当てて強く往復されると堪らなく全身が震えた。
「あっ、あああっ、あああああ!!」
 眉間を皺寄せたまま、骸が笑みを深めて指を引き抜く。
「嫌だっ、あああっっ」
 折られた右手で顔を抑えつけていた。左手の自由も戻る。最後の抵抗、にしては、あまりにも儚い――。それは骸を面白がらせることでもあった。
「世界一みっともなく昇天しますよ、君。ケツに十字架ぶち込まれて往生する吸血鬼なんて聞いたことがない」
「あぁぁァああっっっ!!」
 片腕で首を抑えられる。両手で縋り付こうとしたが、そのスキを突かれた。
 ずぶっ。――断末魔すら、あがらなかった。
「…………ッッッッ!!!」腰がガクガクと跳ね上がって止まらなかった。内部に押し入ったものが――冷たい金属が――どんどんと奥に進む。
「ァッ、ァアッ」視界が濡れていく。号泣している自覚はあった。骸が笑いながら十字架を出し入れさせる。その度に、体が、存在自体が捻じ曲げられて潰されていくような心地だった。
「ひぎぃっ、ぐ、ああああ」瞬きもできない。体の、腹の底が熱くなって脳天まで競りあがる。
「あぐっ、あぐうう!!」
 ぶしゅうううっと全身から噴出したものは黒い煙だった。教会のステンドグラスが涙で滲む。咆哮する以外に無い。
「いやっ、ああああ!! 消えるっ!! 消滅する――ッッ!!」
「それだけですか?」
「そ、それっだ、け、だぁ?! っあ!」
 それだけ!! それだけというのか!
 ガクガクと痙攣して腰を振るだけしかない。こん、な、死に方……っっ。何を呪えばいいかわからない、信じたくない!!
「君の扱きじゃ足りないんですよ……」
 うっとりとした声で呟き、骸が手を伸ばす。
 今更、ペニスを直接触られても達するわけない。それどころじゃない。ぐちゃぐちゃと中を引っ掻き回す十字架しか見えない。
「抜いてえっ、抜けええええ――っっ! 速く!!」
「今、ヌイてあげますよ」
 くすりと涼しげに言い返してくる。
 本気で号泣する経験なんて初めてだった。
「おね、が、っ助けて! 助けて!!」
「そんなにヌイてほしかったんですね。我慢してたんですか?」
「ああああああ!!!」
 言いようのない絶望感で頭がどっぷりと浸かる。びくんっと腰が跳ねた。骸がペニスの先を舐めた。
「ひいっ……?!」
「気持ちいいでしょう?」
「あ、ああああ」何がなんだかわからなかった。夢中で頷いていた。痛み以外のものが――とにかく怖くて何でもいいから縋りつきたかった。
「もっと……! もっと!」
「ええ。そうですね」
 骸の口に吸い込まれた。手で根の方を可愛がり、舌と口とで亀頭部分を徹底的に捏ね回す。その一動に腰が跳ねる。
「うぐ、えっ、ううっ」
 しゃくりあげながら自らの足を引き寄せる。不意に骸が顔をあげた。股の間を覗きこんで、ぐい、と十字架を動かす。
「ひいいっっ?!」
 背中が反れた。左に右にと探られて、その度に十字架が新たな肉と触れ合う。じゅううう、と、強く焼きつくような衝撃でまた泣き叫んでいた。
「ぎゃああっっ! あ、あ――、っ?!」
 のたうちかけて、ガクンと肘が崩れた。一瞬、真っ白になった。衝撃で涙が止まる。
 骸が掌でペニスの先をごりごり擦りながら含み笑った。
「ヌケましたね」見せつけられた掌には、白く濁ったものが纏わり付いていた。
「……ああぐっう……?!」体が完全に倒れて寝そべる。そのまま爪先までをピンとさせて痙攣していると骸が笑いだした。
「気持ちいい、でしょお?!」
「あ、あああっ、あひいっ……!!」
「前立腺を十字架で掻き毟られる吸血鬼なんてのも君が初めてですね」
 ぐいっとオレの両足を開かせて、骸が十字架を持ち直す。ピンポイントでの責めに切り替わると壮絶だった。
「あぐっ、ぐっ!」
 ぐりぐりと押し付けられる度に床を掻き毟り、
「ひぎいいいいっっ!! あ、はああ!!」
 円を描いて混ぜるようにされるとペニスがびくびく反り起った。もう片手で彼は楽しげに反り返るそれを扱きあげる。二度目の射精もすぐだったが、骸は手を止めない。
「ひいっ、あっ、い。イったぁ、ああっ!」
「十字架をもっと味わいなさい。イキ死ねるなんて幸せじゃないですか」
「ぎっ、あっ、あああぐうう!!」
 内股がびくびくと引き攣る。ぶしゅっと飛び散ったものを指先で掬い、ぺろりと舐める吸血鬼が天使に見えた。伝説の生き物だが彼等は最も残忍な方法で吸血鬼を殺すと言う。
「あああっ、あああっ……」
 殺人的な快楽だった。まだペニスはビクビクしてるし気持ちよすぎて気を失うくらいだ、が。
「刹那の美しさっていうのは、いつ見ても、ときめきますね……」
 骸が目を細める。オレの全身から立ち昇る黒い煙を眺めていた。ピンッ。何の音かわからなかった。ただ、引き抜かれた感触にゾクゾクとして背筋を仰け反らせる。
 オレの両足を抱え込むと、骸が笑いだした。
「今にも死にそうですね……。ツナ。命乞いは?」
「あ……」
 視界が霞んでいて骸の顔もよくわからない。心臓から血をだせばこんな痛みが全身を貫くだろう。指一本も動かせなかった。
「む、ぐ、ろ……」
「今の君の状態だとセックス一回くらいで死ぬと思いますが」
「…………」
 呼吸がぜえぜえとする。
「お……、ま。え。ンなこと言っ……、止める気、ない……だろ……」
「ご名答。よくわかりますね」
「そ…りゃあ……」涙が止まらない。
「いきますよ」「あぐ――っ」
 ずるっと内部に硬いものが押し入る。その衝撃でくらくらとする――、あいだに、引き倒されて揺さぶられていた。奥を突かれる度、目眩がする。
「ひぎっ、あっ、はぁああっ」
「ツナ。死ぬ前に――、いうことは?!」
 覆い被さり、律動を繰り返しながら骸。
「ツナ。言いなさい」汗の玉を浮かべ、額に前髪を張り付かせている。骸を見上げながら、もはや、最後の感覚で自失していた。
「……っ、はっ……。ァッ」
 ゆっさゆっさと揺する動きで声がでない。その腰つきから、掻き回すような動きに変えて、骸が同じ質問を繰り返した。
「むくろ……」酷く脱力する。快楽も痛みも恐怖も最後には無気力に変わるらしい。
「おま……、大事に……、して、た、つもりだった、けど。お前が、おれ、を、そんな嫌ってたとは知らなかっだ――、ンッ」内部で 膨張が起きた。ぶるっとペニスが震えて、刺激によって顎を反らせる。背中に腕が回った。向き合って座るような格好で、骸が胡座を掻く。
「わかってないですね」
 うんざりするような声だ。
 上気した頬と見開かれた両眼からは意思が読めない。酷く興奮してる――、あと、酷く疲れたような声だ。
「ツナ……」首を伸ばしてくる。
 涙は枯れた。けど、最後の力でそっぽを向く。
「ツナ。早く」骸は責めるような声をだした。
「僕をイかせないと本当に死にますよ」
「う、むぅっ!」
 顎を掴むなりの口付けだった。舌を絡ませながら縫うようにうめく。
「それ、……意味っ……。いっ?!」
 ぎり、と、乳首を抓られて脇腹が痙攣した。
「そのスカスカになった体内に、高位の吸血鬼がスペルマを――それも体内にぶち撒いたら――」
「――――……、あっ」
 揺らされて、低くうめきながらもハッとする。
 吸血鬼とはいえ射精するし、同族の女相手なら孕ませることもできる。――一回の射精で何万の子種が出るのだ。子種。つまり、力、だ。
 呆然としている間に、腰が掴まれた。
「ツナ、ここはどうですか?」
「ァッ、あうっ」ひくん、と、足の爪先まで痙攣する。
 骸がにやりとしてその一点を集中的に抉った。
「あはぁああ?! アッ、あぐっ、あっ、だ、いっちゃ……?!」
「どうしました。自分でも動きますか?」
「ア、あぁ……」体が震える。足の裏から、背中まで、炙られているようで酷く鳥肌が立つ。最悪だ――。蕩けた頭で何度も繰り返す。
「う、んっ。ぁっ」
 左手で骸の背中にしがみ付いて腰を振りたてた。
 骸が遠慮なく高笑いをし始めた。そうしながらオレのペニスを握る。
「ヒッ?! だ、だめっ。そんな――、イクだろおお?!」
「ここをこうしたらイキます?」
「ひぎぃ?!」
 電撃で打たれたように体が反り返る。
 鈴口に人差し指が突き立った。ギリギリと食い込むツメの感触。腰が酷くガクガクとした。全身が熱い――、イキそう、だが、耐えないと!
「あっ……ぐう」
 ガクガクと痙攣したままで、懸命に後腔に力を入れる。目の前でペニスをぐちゃぐちゃと扱いてみせながら、骸が溺れきったような目でオレを見下ろす。
「耐える姿が面白いですよ……! でもどう見ても先に君がイキますねえ」
「あ、あああっっ。骸ォ、出して……!!」
 他に縋るものなど無い。ぐりぐり、と、根本まで咥え込んだ体を強引に左右に揺さぶって捻じ込むように動かした。圧迫される内部の一点――そこから狂ったような衝動が沸きあがる――。
「だしてえっ……!!! 出して!! お願いだからイけってばぁ!」
「じゃ、一気に引き抜いてください。それから一気に奥まで入れる」
 にこやかな命令に逆らうことなどできない。
「はァう……っっ!!」肌が粟立つ。骸、と、呼びかけると六道骸は僅かに表情を変える。それがどういう意味を持つのかわからかったが縋る以外に無い。
「骸! 骸、だしてっ。オレの中に出して!! 早くっ。早く出して、骸ォ――っ!」
「……あぁ……、君は僕を嫌ったのでは?」
「ど、どうでもいいからっっ。だして!! だしてえええ!!」
「ツナ……」
「ん?! んっ、んん、むぅっ」
 骸が再び口付けてきた。一瞬だ。次の時には、頭から引き倒されて彼は背後から馬乗りになってきた。
「クハッ……、よく味わうんですね!」
 ずっちゅっ!! 抉りこむような、背後からの一突きで膝が崩れた。
「ヒッ、ぎっ、あ、あはぁァアア――――っっ?!!」
 目の前が真っ白――を通り越して、赤くなる。最奥に叩きつけられた暖かい、もの、が。
「ひぎゃああ何コレぇえええっっ! 何これ何これ何ぃぃいいっっ!! すごいいいっっ」
 ガクガクと絶え間なく痙攣するほどに壮絶な衝撃をもたらしていた。渇いた体に染み込む水のように浸透し、染み込んだ傍から気が狂うような焦燥に摩り替わる。
「ひぎっ! ッァ、うぎっ」
 ごろごろともんどりを打つ間に、ぶしゅびしゅとペニスから白濁が噴出する。
「あぐっ、あうっ」痙攣が止まらない。舌を突き出しながら床で悶えていると、二の腕を掴む手を感じた。骸だろうが、殺した人間の体を支えるなんて酔狂だ。全身に浸透したのは途方もない快楽だけで、ペニスのことしか考えられないくらいに強烈だった。
「い、いくっ……またいくっ……」
 震えながらうめく。気絶するのはすぐだった。




>> つづく